酒税法改正がハードル

 ところが、である。キリンは諦めていなかった。いや、諦め切れない事情があった。

 業界で“独り負け”となっているキリンにとって、来年のシェア回復は最重要課題。サッポロの“二番煎じ”とやゆされようとも、販売数量を伸ばす必要があるのだ。背水の陣を敷くキリンには、競合メーカーが参入をちゅうちょしている市場はむしろ独占できる好機と映っただろう。

 小売店の店頭で発泡酒戦争が繰り広げられているさなかに、実は、キリンは虎視眈々と好機をうかがっていた。サッポロが断念した“第三のビール”でのゼロゼロ市場参入を目指し「国税当局のお墨付きを得られるのを待っていた」(ビール業界関係者)のである。晴れてお墨付きを得たキリンは、10月末、全国の支社に新商品の発売を内々に通達。一斉に、全国展開する小売りチェーンに営業攻勢を仕掛けた。

 もっとも、同商品の寿命はそう長くは続きそうにない。酒税法の改正により第三のビールが増税され、販売数量が減少することが決定的だからだ。遅くとも15年春までには改正される方向で、来年1月27日に発売される同商品は、“短命”にならざるを得ない。

 業界内では、「改正までの短期決戦で開発投資を回収できるのか」と疑問を呈する声も上がる。少しでもビール類市場におけるシェアを積み上げなければならないほど、キリンは苦境に立たされている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 泉 秀一)