また、隣近所の助け合いも大きな支えとなったという。普段からの共助と自給自足的な生活が、非常時に強みを発揮したのである。80歳代のある女性は「1週間や2週間、閉じ込められても死にはしない」と、笑いながら応えたという。大雪に困り果てたのは、村の若い勤め人たちだった。

「うちの地区では80歳代でも働き盛りです。皆さん、年齢などすっかり忘れています。これほど元気な高齢者ばかりの村なんてないと思いますよ」

 こう語るのは、南牧村に住む伊藤新一さん、73歳だ。伊藤さんは1992年に夫婦で埼玉県から南牧村に転居してきた。いわば、移住者の先駆け的な存在だ。現在は村内で5000坪ほどの農園を営み、ブルーベリーやズッキ―ニ、花卉などを栽培している。

 地元の人の話によると、伊藤さんは面倒見の良い人で、地域のお年寄りの買い出しや通院などに手を差し伸べているという。地域にしっかり溶け込んでおり、移住して10年ほどで地区の区長を務めた。現在は村の農業委員に就任しており、農業を志して南牧村に移住してきた若者らの相談役でもある。

高齢化率だけで悲惨だと決めつけるな
村人がむしろ生き生きと暮らしている理由

 伊藤さんは、マスコミの南牧村の取り上げ方に納得いかないという。高齢化率などの数値だけを見て、一方的に悲惨な村だと決めつけているというのである。そうしたおざなりの報道ではなく、南牧村の住民の日常生活をしっかり見た上で報じてほしいと訴える。村人たちは困窮しているわけではなく、むしろ生き生きと明るく生活していると力説するのだった。

 伊藤さんは自分が栽培したブルーベリーやズッキーニ、野菜や花卉などを市場に出荷せず、スーパーや直売所などで販売している。そんな伊藤さんは「南牧村の農業には可能性があります。大規模、高収入の農業はムリですが、大規模農家以上に生活は安定し、豊かに暮らせます」と力説する。実績に裏打ちされた話なので、説得力がある。