新生児の数は年間でわずか1~2人
急激な過疎化に襲われる南牧村
連休の谷間に、ある山村を訪ねてみた。電車を何度も乗り継ぎ、辿りついた終着駅から小さな乗合バス(ワゴン車)に乗り込んだ。乗客は1人。車窓から街なみがあっという間に姿を消し、鮮やかな新緑が目の前に広がった。
小さな乗合バスは、急峻な山の間を蛇行する川沿いをひた走った。右へ左へと曲がりながら、川を遡っていった。20分ほどすると曲がりくねった道沿いに人家が現れた。それらはまるで細い一本道の両側にへばりつくように立っていた。
視線を上に向けると、山の斜面にも人家が点在していた。狭い谷間に肩寄せ合うように集落が形成されていた。
バスを降り、村役場へと向かった。訪れた先は、群馬県甘楽郡南牧村。長野県境に広がるコンニャクと林業の村である。
「去年はわずかに1人でしたが、今年は4人になりました」
こう語るのは、南牧村の幹部職員。村全体の小学1年生の数だという。子どもの数が激減し、かつて3校あった村の小学校は現在、1校のみ。新入生がひとケタという寂しい年が続いているという。
それどころか、新生児の数が年間で1人から2人という状況になっているという。子どもの姿が村の中から消えつつあるのである。
南牧村は昭和の大合併で誕生した自治体だ。1955年に3村が対等合併し、産声をあげた。当時の人口は1万892人にのぼった。しかし、その後、急速に過疎化が進み、現在の人口は2366人(2013年3月末時点)。つまり、58年間で人口が約8割も減少してしまったのである。
南牧村の問題は、急激な人口減少だけではなかった。少子高齢化が同時進行しており、14歳以下の子どもの数はわずかに82人。少子比率3.47%である。その一方、65歳以上は1355人にのぼり、高齢化率は57.27%に達する。いずれも日本一の数値で、人口減と少子高齢化が進む日本社会のいわばトップランナーとなっているのである。