売り込み方を工夫し、対象を2つの特徴的なグループに絞り込んだ。1つは新婚家庭、もう1つは住宅を新築した人たちだ。そこで、地元の裁判所にあたって結婚許可証を申請した人のリストを手に入れた。もう1つの情報源からは、住宅ローンを申し込んだ人のリストを集めた。こうして情報を得た相手1人1人にメッセージを書き、独自のダイレクト販売キャンペーンを展開した。この作戦があたり、購読申し込みが殺到した。

 学校の新学期が始まると、経済学で納税申告書作成の課題が出た。計算してみると収入が1万8000ドルという結果になった。先生はこの数字にミスがあると決めてかかり、小数点を移動させて収入額をいったんは訂正した。ところがミスは自分のほうだと気づいて、先生は意気消沈してしまう。なぜなら、自分の収入よりもデルの収入のほうが多かったからだ。

成功への階段

 デルの仕事の経歴は、実際にはオースチンのテキサス大学在籍中から始まる。

 13歳で手にしたアップルのマザーボードの分解組み立てを何度も繰り返して育った少年は、ここで起業家1年生にまで成長し、趣味のコンピュータでお金を稼ぐようになっていた。コンピュータの再生と販売を手がけたからだ。

 大学在学中にPCリミテッド社という企業を創立、そのオフィスを大学の寮の一室につくった。勉強に専念しろという両親の忠告を無視し、ビジネスに対する思いのほうがはるかに大きくなり、自分のPC会社に全精力を注ぎ込んだ。

 1984年、資本金わずか1000ドルで、デルコンピュータ社を設立した。このように資本が小さかったために、いたずらに資本を食いつぶさないようなビジネスモデルを、なんとしても開発しなければならなかった。

 出した結論は、注文を受けてから生産する手法だった。こうすることによって、運転資金を在庫に充てる必要性が減る。おかげで在庫はわずか約11日分となった。この在庫水準は現在も変わらない。これを平均的な流通チャネルの在庫45日と比較すれば、そのコスト削減効果は明らかだろう。