かつて400円だった時代も
デフレの値下げ競争はとうとう終焉

 振り返ってみれば、2003年頃、牛丼は一杯400円だった。「この頃は、ワンコインで食べられるものがあまりなかったから、それでも牛丼は安かったのです」。野村証券の繁村京一郎シニアアナリストは、こう振り返る。しかし、その後のデフレ進行によって、ワンコインはおろか、300円弁当も登場する時代となった。こうした動きに呼応して、牛丼チェーンも値下げ競争に走ることになる。

 今年に入ってからの並盛り価格の上昇は、本格的な値上げ時代を予感させるが、振り返ってみれば昨年12月、吉野家が最初に仕掛けた「鍋戦争」が値上げの最初の“予兆”だった。580円(消費増税前)と高めの価格帯ながら、具材も充実しており、瞬く間にヒット商品となった。「価格競争に走らず、メニューの質を追求した吉野家の作戦勝ち」(繁村氏)だった。

 すき家と松屋も追随し、冬期の人気メニューとして定着したのだが、今年秋、すき家は鍋を復活させるに当たり、昨年の580円から734円に値上げをした(具材3割増に伴う)。牛鍋という高額メニューの投入、そして4月の消費増税あたりから、牛丼チェーンの値下げ競争時代は終焉し、値上げ時代に入ったのだ。

 愚直に牛メニューを磨き上げる吉野家に対して、豚メニューに走っているのが松屋だ。傘下にとんかつチェーンも持っているから、以前から豚メニューの充実には定評があった。4日から発売した「豚テキ定食」は690円と、こちらも高額メニューながら、一部店舗で売り切れるなど好評を博している。

 一番元気がないのがすき家。消費増税後もライバル社を尻目に安値にこだわったが、労働問題で「ブラック企業」と批判されたこともあり、業績の回復にはまだ時間がかかりそうだ。もっとも、牛丼にトッピングの概念を最初に導入し、女性やファミリー層の顧客を開拓するなどの功績は大きい。

 気になるのは今後の価格の推移だが、牛肉価格、為替ともに落ち着く気配は見られないため、今後も値上げ路線がしばらく続く可能性がある。しかし、牛丼チェーンの競合は同業他社だけでなく、コンビニエンスストアや街の弁当屋、スーパーの総菜コーナーなど幅広い。400円以上に値上げをすれば、コンビニ弁当の方が安いということになってしまうから、簡単に値上げできる状況にはない。

 新メニューの投入や、具材量アップに伴う実質値上げなど、各社は苦しい舵取りをしばらくの間、迫られそうだ。