「社会インフラ企業」と
防災拠点の必要性

西條 「ふんばろう東日本支援プロジェクト」の「物資支援プロジェクト」でもお世話になったヤマト運輸さんは「社会インフラ企業」を標榜しています。震災後は、単なる企業ではなく、社会を支えている会社と認知されて、ヤマト運輸といろいろな自治体の連携が起きています。御社も「社会インフラ企業」だと思うんです。モノを運ぶ動脈も大事ですが、ゴミで静脈が詰まってしまったら、社会は立ちゆかなくなるわけですから。

【所沢のジャンヌ・ダルク&東日本大震災の救世主】<br />「産廃屋」が地域に提供できる<br />新しいビジネスモデルとは?<br />西條剛央×石坂典子対談<最終回>

石坂 「社会インフラ企業」、よい言葉ですね。

西條 地域に貢献するという視点で御社を見たとき、僕は「防災の拠点」になることを提案したいですね。広大な土地があり、しっかりした建物もありますしね。「シェルター企業」になれると思うんです。

石坂 なるほど。うちにはわずかながら太陽光パネルもありますので、災害の際には携帯電話の電力の提供などもできると思います。大型重機も持っているため、自治体からは有事には協力するよう要請されているんです。

「クリーン・エコロジー・シェルター企業」
としての石坂産業

西條 へえ、そうなんですね。そういうことは一般の人は知らないですよね。まさに、「シェルター企業」として理想的な条件を備えているように思います。

西條 「ふんばろう東日本プロジェクト」は、「物資支援プロジェクト」から始まりました。行政を介さずに必要としている避難所や個人避難宅に全国から直送できる仕組みをつくることで、必要な物資を、必要なときに、必要な分だけ送ることを可能にしたのです。それによって、3000ヵ所以上の避難所に3万5000回以上の物資支援を実現することができました。
 それに加えて、Amazon社から提案をいただき、「Amazonほしい物リスト」というシステムを使っての物資支援を行いました。「Amazonほしい物リスト」は、リストに登録してあるものを他の人が購入することで、プレゼントしてもらえるというシステムです。通常は、お友達へのお祝いなどに使われるシステムですが、これを被災地支援に応用したものです。今でも「動物班」が活用しています。
 現在、この物資支援の仕組みをさらにバージョンアップさせて、平時から次の災害に備えようと準備を進めているところなのですが、「石坂産業」がその拠点になっていれば、首都直下など大きな災害が起きた際には、避難されてきた方に必要とするものを配布することができるようになります。私がやっている「スマートサバイバープロジェクト」と連携すれば、講師派遣もできますし、防災教育と防災拠点の場になることもできます。

石坂 そうすると、安全、安心を守る産廃会社になれますね。これは同業他者にも応用可能なモデルなので、日本各地に地域社会に貢献できる産廃会社をつくることもできそうです。

西條 ええ、地域の脅威を与えると思われがちな産廃業界が、クリーンでエコで、かつ地域の安全と安心を守る「クリーン・エコロジー・シェルター企業」になったら痛快ですね。

石坂 なるほど、それはいいアイデアですね。業界をよくしたい、社会をよくしたいという想いは強くあります。周囲から「なぜブレない姿勢を貫けるのか」と聞かれるのですが、もしかするとここに関係しているのかもしれません。

西條 僕も社会をよくしたいと強く思っています。これから連携して具体的に動いていけるとよいですね。

石坂 はい、どうぞよろしくお願いします。3回にわたる対談、楽しかったですし、いろいろなアイデアで活性化しました。

西條 こちらこそです。ありがとうございました。またの機会にぜひよろしくお願いします。
(終)

【所沢のジャンヌ・ダルク&東日本大震災の救世主】<br />「産廃屋」が地域に提供できる<br />新しいビジネスモデルとは?<br />西條剛央×石坂典子対談<最終回>
<著者プロフィール>
埼玉県入間郡三芳町にある産業廃棄物処理会社・石坂産業株式会社代表取締役社長。99年、所沢市周辺の農作物がダイオキシンで汚染されているとの報道を機に、言われなき自社批判の矢面に立たされたことに憤慨。「私が会社を変える!」と父に直談判し、2002年、2代目社長に就任。荒廃した現場で社員教育を次々実行。それにより社員の4割が去り、平均年齢が55歳から35歳になっても断固やり抜く。結果、会社存続が危ぶまれる絶体絶命の状況から年商41億円に躍進。2012年、「脱・産廃屋」を目指し、ホタルや絶滅危惧種のニホンミツバチが飛び交う里山保全活動に取り組んだ結果、日本生態系協会のJHEP(ハビタット評価認証制度)最高ランクの「AAA」を取得(日本では2社のみ)。
2013年、経済産業省「おもてなし経営企業選」に選抜。同年、創業者の父から代表権を譲り受け、代表取締役社長に就任。同年12月、首相官邸からも招待。2014年、財団法人日本そうじ協会主催の「掃除大賞」と「文部科学大臣賞」をダブル受賞。トヨタ自動車、全日本空輸、日本経営合理化協会、各種中小企業、大臣、知事、大学教授、タレント、ベストセラー作家、小学生、中南米・カリブ10ヵ国大使まで、日本全国だけでなく世界中からも見学者があとをたたない。『心ゆさぶれ! 先輩ROCK YOU』(日本テレビ系)にも出演。「所沢のジャンヌ・ダルク」という異名も。本書が初の著書。