中国製冷凍餃子の農薬汚染問題、老舗料亭などの一連の偽装表示、事故米問題に続き、食の安全を脅かす事件がまたもや起きた。しかも、今度は世界規模の大事件だ。言わずと知れた中国製乳製品・加工食品の「メラミン」混入事件である。
事の経緯をざっと整理すると、問題の発端は中国河北省に本社を置く石家荘三鹿集団製の粉ミルクだった。本来はプラスチックや接着剤など工業用化学物質として使用される有害物質のメラミンが、不正に乳製品に混入されていた。食品中のたんぱく質は窒素量から推計されるため、有機窒素化合物であるメラミン(白色結晶の粉末)を混入することで、タンパク質の含有量を不正に多くみせようとしたわけだ。
メラミンは、長期に渡って摂取すると、腎臓結石などの尿路異常、そして腎不全を引き起こし、死に至る場合もある。特に体の小さな乳幼児へのダメージは大きく、実際、中国ではすでに5万人以上の乳幼児が治療を受け、うち5人が死亡したと伝えられている。
なにより深刻なのは、報道によれば、三鹿には昨年12月から粉ミルクが原因で乳幼児が発病したとの訴えが相次いでいたにもかかわらず、今年9月まで問題が表面化しなかったことだ。地元政府が公表を阻んだためと報じられているが、これでは、北京五輪の閉幕まで中国の中央政府も隠ぺいに加担していたのではないかとの疑念が国際社会に広がるのも無理のない話である。
汚名返上を目指す中国政府によるその後の調査で、不正行為は三鹿だけではなかったことは分かった。内蒙古伊利実業集団など大手を含む22社の乳製品でもメラミン混入が判明。食品世界最大手のネスレの中国製品からも検出された。さらに、九月末には、日本の丸大食品の菓子類や総菜からもメラミンが見つかった。
メラミンといえば、2007年の中国製ペットフード事件が記憶に新しい。同じくたんぱく質含有量を多く見せかけるためにメラミンが混入され、北米で多数の犬や猫が腎不全で死に、国際問題化したばかりだった。中国の食品製造の現場ではメラミン混入が常態化しているのではないだろうか。