物語で学ぶ楽しさ
網羅的でありがながら繋がっている

 『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ! 』(中経出版)永井孝尚著

「100円のコーラを1000円で売る方法」シリーズに続いて、本書もテンポのよいビジネス・ストーリーで構成されています。読んでいくうちに、ビジネス戦略やマーケティングのエッセンスがわかるという楽しい内容です。舞台が“コーラ”から“コーヒー”に変わった、ということですね。

 ひょんなことからドリームコーヒーの社員になった新町さくらが、コーヒービジネスを通して経営戦略を学んでいくストーリーです。ブラック企業のロイヤル金融をクビになった新町さくら(実は辞めてやった!)は、小さな喫茶店に入る。そこで出会ったのがドリームコーヒーの社長・渋谷夢之助。ロイヤル金融を飛び出した事情を話すと、これもご縁かも…と、ドリームコーヒーで働くことになる。コーヒーのことなどまったくの素人のさくらだが、配属であるSP室の藤岡らに教えられながら、コーヒーとビジネス(戦略)について学んでいくという展開です。

 10の物語が用意され、読者もさくらと同じように新鮮な感覚で、ビジネス戦略のツボを押さえていくことになります。例えば……

 ▼ネスレはなぜコーヒーマシンを無償で提供するのか?消耗品で利益を生み出すビジネスモデルのジレットモデルについて学べる。ひげ剃りのジレットは、持ち手部分を安く販売し、消耗品(替え刃)で利益を上げるモデルを作り上げた。同じように、ネスレもコーヒーメーカーをタダで配り、消耗品で稼ぐモデルを展開している。オフィスにコーヒーメーカーを設置するため、“ネスカフェアンバサダー”に応募した人も多いことでしょう(笑)。ほかにも、プリンターとインク。コピー機とトナー。比較的安い価格の Kindle と電子書籍。LINEとスタンプ。ジレットモデル的なものはジレッとのほかにも沢山ありますね。

 ▼お客様はカフェの「何に」お金を払うのか?製品は「中核」「実態」「付随機能」から成り立っていることを学ぶ。例えばスポーツクラブの中核はスポーツ施設ではなく、「健康で若々しいライフスタイルの獲得」、実態はスポーツ施設、付随機能はマンツーマン指導などである。自分の会社の製品・サービスの中核は何?、実態は何?、付随機能は何?って考えてみると面白い。さくらも、自分が関わるDDプロジェクトで、新しいコーヒー商品の、中核、実態、付随機能を発見していく。

 いくつかのビジネスモデルや経営戦略が、新町さくらのコーヒー物語にちりばめられ、テンポよく進むストーリーを楽しみながら学べます。前述の三谷宏治さんの「ビジネスモデル全史」を会わせて読むと、本書はまた違った楽しみも増えるかもしれません