もっとも、財政の長期的な持続性を考えるなら、目下の課題は財政支出の規模の拡大と、質の低下が起こらないように気をつけることだろう。消費税率を引き上げて、その対策として財政支出を拡大するような当面の財政政策は、いわゆる「タックス・アンド・スペンド」による財政規模の拡大である。

 需要の追加は官僚や政治家が好む財政支出の拡大によるのではなく、広い範囲の国民を対象とする減税ないし給付金が好ましい。

 さて、インフレ率が高まりすぎた場合にはどうするか。インフレの抑制に金融引き締めが効果を持つことに対しては、過去に複数の例がある。また、財政バランスを意識する場合、景気の過熱が背景にあれば、同時に増税を行うことが可能だろう。

 おおよそどこまでインフレが進む可能性があるか、あるいはインフレ率が何%なら低過ぎ、何%なら高過ぎると判断されて、どのような措置が取られるのかについて、国民が情報を持たずに、大きな不確実性に晒されると、経済活動に不便であり、ひいては生産量が縮小する。

 その時々に目指すべきインフレ率と可能な国債利回りに変化はあり得るだろうが、目指すインフレ率の上限と下限を予め示しながら、ある程度のインフレ状態をつくり、可能な場合は国債利回りを抑えるために日銀が本稿で言う「財政ファイナンス」を行う「秩序ある調整インフレ」政策は、経済の環境整備のために適切であるように思われる。

進行する可能性はかなり高い?
調整インフレの「損得」

 程度、期間、手法の詳細は不明だが、現実に本稿で言うような意味での「調整インフレ」が進行する可能性は、「かなりある」のではないだろうか。

 前述の通り、インフレは実質的に、現金ないし現金の同等物の保有者に対する課税だ。また、国債の実質利回りがマイナスに押さえ込まれた場合、国債の保有者は、銀行の預金者のような間接的な保有者も含めて、実質価値において損をする。