景気回復や政府の「国土強靭化」方針、2020年の東京オリンピック開催に向けた建設投資の増加で業績が回復しているゼネコン業界。一方で、複雑な下請け構造や、技能労働者の将来的な不足といった課題も残る。スーパーゼネコンの一角を占める清水建設の宮本洋一社長に、工事の受注環境や今後のビジネスモデルの在り方、若者にとって魅力ある業界とするための取り組みについて聞いた。

――4月からの消費税率8%への引き上げもあって、GDP(国内総生産)は足元で下落しています。景気後退も懸念されますが、建築工事の多くを占める民間部門からの工事の受注環境に変化はありませんか。

みやもと・よういち
1947年東京都生まれ。71年東京大学工学部建築学科卒、清水建設入社。北陸支店長、専務執行役員九州支店長、同営業担当を経て2007年から現職。日本建設業連合会副会長。
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 受注環境において消費増税時の影響が大きかったのは住宅関連で、我々にはそう大きくありません。景気や製造業の設備投資の動きについては、原子力発電所の再稼働に向けた動きや石油価格の下落で、電気代が下がる余地もありますが、依然として慎重に見ていかないといけない。

 円安になったからといって、これまで海外に移っていた日本の製造業があっさり国内回帰し、本格的な国内設備投資が出てくるのか。そう簡単な話ではないでしょうから、トヨタ自動車さんのように国内重視を宣言しておられる会社に頑張っていただきたい。

 その中で、研究開発の国内拠点を拡充したり、省エネのために古い設備を更新するといった動きに期待します。国内にものづくりの場所をある程度確保しないと、若い人の働く場所がなくなる。国内での雇用の確保というのは、建設業にとってだけの問題ではありません。