金融緩和第二弾、消費税率再引き上げの延期などにより、2015年の日本経済は本格的な回復軌道に乗るのか。それとも、思わぬリスクシナリオがあるのか。山田 久・日本総研調査部長/チーフエコノミストに詳しく聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 編集長・原 英次郎、小尾拓也)
アベノミクス、投資意欲、賃金
2015年、景気回復のキーワード
1987年京都大学経済学部卒業(2003年法政大学大学院修士課程・経済学修了)。同年 住友銀行(現三井住友銀行)入行、91日本経済研究センター出向、93年より日本総合研究所調査部出向、98年同主任研究員、03年経済研究センター所長、05年マクロ経済研究センター所長、07年主席研究員、11年7月より現職。『雇用再生 戦後最悪の危機からどう脱出するか』(2009年、日本経済新聞出版社)『デフレ反転の成長戦略?「値下げ・賃下げの罠」からどう脱却するか』(2010年、東洋経済新報社)『市場主義3.0?「国家vs国家」を超えれば日本は再生する(2012年、東洋経済新報社)』など著書多数。
――2015年の日本経済の見通しは、どうなっていますか。
2015年の日本経済は、引き続き回復に向かうと見ています。その理由は第一に、金融緩和第二弾、補正予算、消費税増税の先送りといった安倍政権の経済政策が、少なからぬプラス効果を生むからです。
第二に、設備投資の堅調さ。足もとの円安で輸出関連を中心に企業業績が回復しており、原油安も企業収益にプラスに働くでしょう。そうしたなか、これまでの設備投資の抑え過ぎの反動と、首都圏を中心とする東京五輪を見据えた再開発案件の需要増により、設備投資への意欲が増して行くと見ています。
そして第三に、賃金の上昇です。実質賃金の上昇までにはまだ時間がかかりそうですが、昨年から久方ぶりに始まった名目賃金の上昇は、今年も続くでしょう。人手不足感もあって、大企業ばかりでなく中小企業の賃上げ気運も出始めると思います。1990年代後半期以降、企業業績が良くなっても賃金が増えないという状況は変わったと見ています。
――経済の回復ペースは、予想以上に速いのでしょうか。
回復傾向にはあるものの、ペースはそれほど速くないと見ています。その理由の1つは、円安にもかかわらず輸出があまり伸びていないこと。本来120円を超えて進む円安は、日本経済にとって大きな追い風になりそうですが、長らく続いた円高時代に自動車・電機などの輸出企業が海外生産シフトを進めた結果、従来までに見られたような円安の恩恵が薄れているからです。
2つ目は、先に述べた人手不足に関する負の影響。全体的に見れば設備投資需要は伸びるでしょうが、人材面のボトルネックにより、建設・不動産などの投資意欲が足踏みをする可能性もあります。
そうした状況を勘案して、日本総研では2015年度の実質GDPを+1.6%と見ています。2014年度の▲0.7%に対して数字自体は強く見えますが、昨年4月の消費税増税の反動なども織り込んでいるので、その意味では堅い見方となっています。