アップルのビーコン規格「iBeacon」に対応した製品例。後ろに写るカバーを装着し、壁に貼り付けて使う。ボタン電池1個で約2年間駆動する(写真はSAPの年次イベント「SAPPHIRE NOW2014」でDOL編集部撮影)

 最近にわかに賑やかになってきたのが、ビーコン技術である。

 ビーコンは、ブルートゥース(Bluetooth)とラジオ波を用いる省エネ型の通信で、屋内に設置したハードウェアからそこにいる人のスマートフォンなどにメッセージを送るシステムだ。究極のロケーション技術と言えばいいだろう。

 ビーコンが注目されているのは、GPS機能が利用できない場所でもそこにいる人を認識することができる点。それによって、マーケティングだけでなく、さまざまな用途に利用できるのだ。

 ビーコンをすでに利用している業界は小売りだ。すでにと言っても、全米で350万店舗あるうちの、たった1%ほどが導入したに過ぎないのだが、その効果はすでに明らかになっている。

 たとえば、全米の26店舗でビーコン技術を導入したマクドナルドは、クーポンや時間限定セール情報、採用情報、顧客アンケートなどを発信した。4週間のテストの結果、セールになっていたメニューのひとつが8%、もうひとつが7.5%の売上上昇を見せたという。

 アメリカでは大人の半分が、店舗内でもスマートフォンなどのモバイルデバイスを利用しているとされる。従って、ユーザーがすでに目を向けているスクリーンにメッセージを表示するのは、かなり効率的なマーケティング手法となるだろう。

 ビーコン技術を利用できるもう1つの強力な業界は、スポーツだ。たとえば大学フットボールがある。ミシシッピ大学は昨秋、大学スポーツ用に初めてビーコン技術を導入した。

 ここでは、スタジアムの壁に貼られたポスターをスマートフォンのカメラが認識すると、それに関した動画がスクリーン上でプレイされる。別のポスター前では別の動画が展開する。そこに抽選プレゼントなどがあれば、観客はスタジアムに足を踏み入れるなり盛り上がった気分になるだろう。

 また観客席では、スマートフォン上のアプリにスコアボードやチームの試合スケジュールが表示されたりする。また、スタジアム内のセールやお得情報も伝達可能だ。会員特定でリワードプログラム(報酬還元)のサービスをビーコン経由で伝えることもできる。