アメリカでは今、炭水化物を制限するアトキンス・ダイエットが大流行している。あまりの浸透ぶりに思わずとまどう場面にも遭遇する。例えば、レストランに友人たちと食事に行くと、パンを運んでくるウェイターに向かって、必ず誰かが「結構です」と断るのだ。そして振り向きざま仲間に向かって「いらないでしょ?」と念を押す。パンやパスタを食べたい人はのけ者扱いである。このローカーブ(低炭水化物)ダイエットのアメリカでの実践者は、今や1000万人とも2000万人ともいわれている。

 しかし、ご飯、うどん、ラーメンと炭水化物大好き日本国民には、ローカーブの実践はちょっときつい。そこで、炭水化物のエネルギー吸収パターンを考慮した「部分的炭水化物ダイエット」が、大学病院の健診予防センターなどで薦められている。ポイントは、寝る時間から逆算して5時間前以降、炭水化物を食べるのをやめるということだ。

 ご飯やパンなどの炭水化物は、胃の中で消化されるのに3時間、腸で糖分とアミノ酸に分解されて血中に吸収されるまでに2時間かかる。口に入れてからエネルギーとして活躍するまでに5時間という時間がかかるのだ。夜7時に食べた炭水化物は、眠りにつくころの夜中の12時にようやくエネルギーとなるが、睡眠時には基礎代謝エネルギーしか必要ない。すると、糖分は脂肪となって体内に蓄えられる。肥満の始まりである。

 理想的な食事の仕方は、朝食をきちんと摂り、昼食は好きなモノをちょっと豪華にしっかり食べる。小腹がすく3時過ぎにおにぎりやうどんなどを軽く食べ、夜は炭水化物を避けて、タンパク質を主食にビタミン、ミネラルを補給する。刺身に焼き鳥、冷や奴、野菜サラダと煮豆など、いわば居酒屋料理がお手本。こうした食生活を続けて寝る前に軽く体操などで体を動かせば、適正体重に近づくはずだ。適正体重? それは「20歳のときの体重」。道は遠いと言わず、毎月300グラム減でよいのでがんばろう。