世界最大の国際家電見本市「CES 2015」。米ラスベガスの会場で、家電3社のトップが示した再生の道筋と成長への青写真とは。
それでも同じ土俵で戦い続けるのか──。米ラスベガスで催された世界最大の国際家電見本市は、再生を期す電機各社にあらためてそう問い掛けているようだった。
Photo by Masaki Nakamura
特にテレビは深刻だ。さながら“高原状態”に入り込んだかのように、技術革新を思わせる新製品が見られず、過去の見本市を振り返るような展示に終始したからだ。
フルハイビジョン(FHD)の4倍の解像度を持つ「4Kテレビ」で、米国で6割のシェアを持つサムスン電子も、今回は目立った技術革新は見られず、「SUHD」とブランド名を変えて、何とか差別化を図ろうという状態だった。
日本勢も状況は同じ。CESの会場で、パナソニックは55インチとしては世界初の8Kディスプレイ、シャープは4Kテレビで8Kの画質に近づけた「ビヨンド4K」、ソニーは世界最薄(4.9ミリメートル)の4Kテレビを発表したが、同じ競争軸で戦うような不毛な状況から、完全に抜け出せているわけではない。
折しもテレビ市場は、4Kテレビが本格的な買い替え需要を迎える前に、50インチで20万円を切るような製品が足元で出始めており、依然として苛烈な価格競争と消耗戦が続いている。
たとえ、技術革新を実現したとしても「一時的なアドバンテージにしかならず、すぐにキャッチアップされる」(津賀一宏・パナソニック社長)ため、各社の製品が“均質化”し、価格で差別化するしかないという構図が、年々鮮明になっているともいえる。
技術革新によって
テレビの枠がなくなる日
深い苦悩が詰まったテレビ市場で、電機各社が模索し始めているのが、新たな“テレビの在り方”だ。パナソニックは企業向けの大型ディスプレイに軸足を移し製品を展開。11年ぶりにテレビ事業の通期黒字化が見えてきた、ソニービジュアルプロダクツの今村昌司社長は「プロジェクターの進化で、テレビの枠そのものがなくなることも考えられる」と青写真を語る。
既存のテレビのカタチが大きく変わる「パラダイムシフト」が起きたとき、収益構造や現在の勢力図は大きく塗り替わる可能性を秘める。商機が潜むクモの糸をつかみ昇り切るのは、日本勢か、それとも韓国勢か。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)