10月末に発表されたソニーの2014年度中間決算は1092億円の最終赤字、今年度決算の予想最終損益は2300億円となり、多くのメディアで「ソニー独り負け」が話題となった。11月に同社は、赤字の原因となったスマートフォン事業の経営陣を刷新するなどの手を打ったが、それ以上の具体的で、抜本的な業績改善策は未だ発表されていない。ソニーが復活するためには、何が必要なのか。先に経営危機を脱したパナソニックとシャープを加えた家電3社の業績と、今後の課題を整理してみよう。
重い腰を上げたソニー
従来にはない迅速な構造改革の実行
2001年9月、ドイツ証券入社。アナリスト経験は20年以上に及び、うち5年間は台湾台北において台湾・中国のエレクトロニクス産業の調査・分析に従事。13年の米 Institutional Investor ランキング(エレクトロニクス/民生用電機)で1位、日経アナリストランキング(家電・AV機器)で2位。上智大学卒。日本証券アナリスト協会検定会員。
ソニーの第二四半期実績や足元の経営陣の対応はともに、ポジティブに評価している。特に、スマートフォン事業における減損処理、構造改革、経営陣交代の矢継ぎ早の動きは評価に値する。
筆者は昨年から、スマートフォンの事業環境が市場や同社の予測以上に厳しい点、2000億円近い減損処理リスクがあり得る点を予想していた。結果はほぼその通りになったが、その後(9月17日以降)の経営陣の対応の速さは予想外だった。ゆえに、今後の収益改善、構造改革進展に対して、よりポジティブな方向性で予想している。
ポジティブと判断できる主な要素を整理すると、以下の3点になる。
(1)スマートフォン事業の減損処理実施や社長交代など経営陣の迅速な対応により、今後、既存事業から巨額の営業損失、固定資産の多額の減損処理などが行われるリスクが大きく低下した。
(2)本社・販売会社の断続的な構造改革により、固定費負担低下の傾向が明確化してきている。
(3)デバイス等部品系事業、及びエンタテインメント事業は円安の恩恵を享受できる一方、円安が悪影響を及ぼすテレビ等最終製品系は、海外販社の縮小で感応度が今後下がっていく可能性が高く、その結果ソニー全社での対ドルの感応度は低下すると見られる。
そうはいっても、ソニーは構造改革が道半ばで、今後も継続的な構造改革の実施が必要であることに変わりはない。