安全保障で言えば、先ほど申し上げた、日本が進んで戦争当事国になることによる、攻撃を受けるリスクなどです。そういうことを重ね合わせて、どちらが得かというのを考えなければいけないのですが、その議論が全くなされていない。

 私は、安倍政権の政策は、経済も安全保障も、一言で言えば自分勝手な都合の良い読みに基づくものだという点で、非常に問題があると思います。

米国も中国も本気で戦争する気はない

──日本も血を流さなければ、アメリカは確実に守ってくれないかもしれない、という考え方は、現実に合っていないのでしょうか。

 もともと、岸信介元首相がおやりになったのは、基地の提供と日本防衛を、イコールとみなしたということです。その後、思いやり予算ということでお金も出すようになった。さらにその後、冷戦が終わった後は、戦後処理ではあるが人も出して協力するようになった。

 そこまでしてまだ双務性がないのか、ということですね。今度は、本当に血を流さないと双務的でないのか。そこはまさに、どちらの方が利益が大きいのかという、バランスシートの問題としてしっかり、議論しなければいけない。

 先ほども申し上げたように、日本という基地やインフラがなければ、アメリカはアジアで軍事的な行動が取れず、プレゼンスも発揮できないわけですから、アメリカにとっては、日本はものすごく重要なんです。一方で、同盟関係ですから多少のことは目をつぶってもいいけれども、血も流さなきゃいかんというのは、全く次元の違う話です。

 実際に心配されているのはアメリカの介入の意志の問題だと思います。尖閣諸島問題で、オバマ大統領は「安保5条(※7)の適用範囲だ」とは言ったが、具体的に何をしてくれるかという保証は全くない。むしろ見捨てられるんじゃないかという恐怖感があって、そこをつなぎ止めたいということなのだと思います。

 しかし、アメリカの意志というのは、自国の大きな国益の判断から出てきているものです。

 アメリカは中国と、本気で戦争するつもりはない。むしろ中国との戦争に巻き込まれることを嫌がっている。冷戦時代と今の違いとして、今のアメリカと中国は、お互いにもう経済的に最大のパートナーで、戦争というものが、政策実現の手段として、あるいは対立を解決する手段としても、割に合わなくなってしまっている。そういう中で、意図しない争いが起きて巻き込まれるというのは、いちばん嫌がることです。それは、オバマ大統領だから、民主党だからという問題ではない。

 そこで日本が、血を流すからということでアメリカを巻き込もうとしても、それは方法論が間違っていると私は思います。

※7:日米安保条約の中核的な規定で、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」に対し、日米両国が「共通の危険に対処するよう行動する」と定めたもの。2014年4月、来日したオバマ大統領は尖閣諸島がその対象となると明言した。