ソフトバンク・キャピタルは、ベンチャー企業を掘り起こす米投資専門会社だ。孫正義社長もあずかり知らないところで、キラリと光る出資先を探す仕事について、同社役員がじっくり語った。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 後藤直義)
──ソフトバンク・キャピタルでは、いつから働いているんですか?
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いやあ、あまりに昔のことで忘れてしまいました(笑)。孫さんと古くからの盟友であるロナルド・フィッシャー取締役兼ソフトバンク・キャピタル社長に採用されて、私は1998年から投資部門で働いています。当時からテクノロジーの進歩について非常に熱心な会社だったことを記憶しています。
現在のソフトバンク・キャピタルは、米国でニューヨーク、ボストン、シリコンバレーにオフィスを構えており、IT産業の3大拠点をカバーしています。合計10人でほどからなる投資の専門家でチームを組んでおり、主にアーリーステージ(早期段階)のベンチャー企業に投資をするベンチャーキャピタルです。
運用資金の規模は500億円以上になります。さまざまな種類のフォンドを通じて投資を分散させています。1社につき1~2億円から最大25億円を投じており、現在も継続している投資ポートフォリオは約60社の企業で構成されています。テクノロジーで時代を変えるようなベンチャー企業を、常に情熱を持って探しています。
──孫社長はベンチャーキャピタルの出資にどの程度関わっているのですか?
ベンチャー企業への個々の投資判断は、それぞれ各チームが独立して責任をもっています。ただしソフトバンク本社とも常に情報交換はしています。どんなポートフォリオを組んで、どういう状況にあるのか。回収をどのタイミングで行うか、常に情報はアップデートしていますよ。
さまざまなファンドを通じて利益を上げているので、全体の利益率についてはここで明言できないのですが、上手にやっていると言えるはずです。
──どのようなベンチャー企業に出資しているのですか?
例えば、ソーシャルニュースの分野で先駆けになった「ハフィントン・ポスト」は出資先でした。さらに、ソーシャル上で拡散するバイラルニュースを提供する「バズフィード(BUZZ FEED)」は、最も初期の段階から投資を続けています。広告やプロモーションを上手にニュースや物語の中に入れ込んで、ユーザーに届けています。
実はバズフィードの創業者のジョナ・ペレッティは、かつてハフィントン・ポストで働いていたチーフ・テクノロジー・オフィサーでした。そこで出資した際の信頼関係があったので、相手の方から「こんど俺が新しいことをやるときには、ぜひとも最初の投資家になってほしい」と声を掛けてくれました。だから最初の投資チャンスをものにできたんです。
その他にも、フランスに本社がある「クリテオ(criteo)」も出資先ですよ。ソフトバンクの子会社であるヤフージャパンと連携して、その広告技術は存分に生かされています。人気の高いリストバンド型の健康管理機器を売り出す「フィットビット(Fit bit)」は私も経営陣に参画しており、お気に入りの銘柄なんです。