ソフトバンクの話題が掲載されることは、米国のメディアでも決して珍しいことではなくなった。携帯通信3位のスプリントを2013年に買収。その後Tモバイルの買収に乗り出したものの、寡占を懸念する当局の反対に会い断念。それらも話題になったが、今はアグレッシブな経営者である孫正義氏がこのままでいるわけがないと見られているのだ。

 ことにここ最近は、中国のアマゾンとも言えるアリババのIPOによって得た巨額の利益を、何に使うのかというウワサがそのほとんどを占めている。同時にソフトバンクの参入によって携帯市場に大きな価格破壊が起こることを、一般消費者も期待しているといったところだろう。

 事業拡大のウワサのひとつが、メキシコの通信会社アメリカ・モビルの事業の一部を買収するのではないかというものだ。

 アメリカ・モビルは大資産家のカルロス・スリム氏が経営する通信大手で、中南米でサービスを展開する。メキシコ国内においては、固定電話で80%、携帯電話で70%のシェアを占め、その市場占有によって通信監督当局からは反トラスト法に関するペナルティーを課されている状態だ。

 アメリカ・モビルが現在計画しているのは、電話事業と携帯通信電波塔事業の売却。市場シェアを50%以下に抑えて、ペナルティーによる利益押し下げを逃れるのが目的だ。これら事業の価値は100億ドルとも150ドル億ドルとも言われており、その買収主が取り沙汰されている。米国のAT&T、中国のチャイナ・モバイルなどの名前も挙っているが、Tモバイルを逃し、アリババIPOによる資産を有し、さらに米国での土台の拡大を狙うソフトバンクは最も有力視される存在だ。

大手メディア買収はあるのか

 携帯通信以外でもソフトバンクの名前は頻繁に登場している。最近目立つのは、ことにメディア関連だ。

 10月初頭には、ハリウッドの映画製作会社レジェンダリー・エンターテインメントへの2億5000万ドルの投資が明らかになった。レジェンダリーは、日本映画の『ゴジラ』のリメイク版やバットマンシリーズの『ダークナイト』などの製作で知られる。加えて、レジェンダリーとソフトバンクは合弁会社を設立し、中国やインドでのコンテンツ供給に取り組む計画だ。

 レジェンダリーへの投資に先立って9月末に流れたのは、ソフトバンクがスティーブン・スピールバーグらが創業したドリームワークス・アニメーションを買収するというウワサだ。買収話は間もなく収まったようだが、このウワサだけでドリームワークスの株価は一時26%も上昇したほど、期待は高まった。

 両社の話し合いは完全に終結したとは伝えられておらず、今後再び浮上する可能性はある。モバイル経由によるコンテンツ消費市場を抑えるために、ソフトバンクにとってメディア会社への投資は有益。米ヤフー、AOL、IACインタラクティブなどを、ソフトバンクの次の買収ターゲットと予測する向きもあるほどだ。