「今年に入り、海外から投資家がほぼ毎日のように物件の視察にやって来る。担当部門はフル稼働の状況だ」(菅原仁・大京リアルド事業統括部担当部長)

 不動産各社が海外富裕層などの投資家の獲得に注力し始めている。

 大京は今年1月、香港で事業を本格的に開始。同社が分譲するマンションの販売や中古物件の仲介などを行っている。すでに昨年6月から本格営業を始めている台湾では「今年度の契約件数の目標は80件だったが、100件に達しそうだ」(同)と好調だ。

 東急リバブルも昨年4月に台湾の現地企業と合弁会社を設立。さらに昨年10月には香港で駐在員事務所を開設した。現在、台湾、香港、上海、シンガポールに拠点を持ち、国内外で約30人体制を敷いている。

 野村不動産アーバンネットも昨年10月、同社で初めての海外駐在員事務所を香港に開設し、海外富裕層などが日本の不動産に投資する際のサポート体制を強化した。

 海外からの投資熱が高まっている理由は三つある。

 一つ目は円安。建築コストや地価の上昇により物件価格は上昇傾向にあるものの、円安により割安感が高まっている。

 二つ目は海外の不動産価格の高騰。標準的な物件で東京と比較しても、台北は約2倍、香港に至っては実に約5倍という高値である。

 三つ目は各国内の不動産投資規制だ。不動産市場の高騰を抑制するため、住宅購入の際の課税措置を強化。これにより、自国での不動産投資のうまみが薄れた。