大手メディアを中心に「医療崩壊」が叫ばれた当時、勤務医の労働環境の悪さが問題視されることもあった。しかし、喉元すぎれば熱さを忘れる。

 メディアが騒がなくなっただけで、勤務医の労働環境が改善されたわけではない。今日もまた、どこかの病院で、36時間勤務の疲れきった勤務医が患者の診療に当たっているのだ。

 すでに医療現場はキャパオーバーとなっているところにきて、目前に迫っているのが2025年問題だ。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になると、医療を必要とする人が増えるのは必至で、病院のベッドが足りなくなることも予想されている。

 そのため、地域で連携を取りながら、「大病院は化学治療や難易度の高い手術などを行う」「診療所・中小病院は慢性期の治療や日常の健康管理」といったように機能を分担し、国民にも今ある医療資源を効率よく使ってもらおうというのが、国が目指す方向性だ。

 対応策として考え出されたのが、冒頭の紹介状なしで大病院を受診した患者への特別料金の義務化だ。

機能分化の決定打にならなかった
「選定療養費」「低紹介初診料」

 これまでも、入院用のベッド数が200床以上の病院では、診療所や中小病院の医師による紹介状を持たずに受診した患者からは、健康保険で定められた治療費のほかに、保険が適用されない「選定療養費」を徴収してもよいことになっている。

 紹介状なしの患者が初診時に支払う特別料金は、大学病院や国立病院機構は5000~8000円程度と割高な料金設定をしているところが多い。しかし、2013年7月現在の平均は2130円(厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況」)。

 選定療養費を徴収するかしないかは病院の裁量に任されており、紹介状なしで受診した患者に特別料金を加算している200床以上の病院は、初診時45%と半数に満たない。

 これとは別に2013年4月からは、健康保険の枠組みに「低紹介率初・再診料」を導入して、大病院への受診抑制を図ることも行われている。