一時国有化されている足利銀行の受け皿選定が大詰めを迎え、北関東地域の第二地方銀行を中心に、再編を模索する動きが加速し始めた。そもそも厳しい経営状態が続いているうえに、新銀行誕生によって情勢が一変、まさに食うか食われるかの戦国時代に突入するからだ。
昨年末、北関東を中心に営業する地方銀行の営業担当者が、長年取引のある企業の社長を訪れたときだった。
「0.9%の金利で五年固定なら借りてやってもいいよ。他の銀行はその条件で貸すというからさ」
融資期間が1年以上の長期融資における最優遇金利、長期プライムレートはおろか、1.5%台だった長期金利をもはるかに下回る低レートの提案に、担当者は言葉を失った。
最近、北関東地域ではこうした光景が至るところで目にされるという。企業の資金需要は伸び悩んでいるにもかかわらず、銀行の数は減っていない。いっこうに解消されないオーバーバンキングが過当競争を引き起こしているのだ。
加えて、一時国有化されている足利銀行の積極的な融資姿勢が、競争に拍車をかけていると多くの地銀関係者は指摘する。
「足利は、長期金利より低いレートの提示は当たり前、企業の信用リスクなど考慮に入れていないかのような低水準で融資を拡大させている」(北関東の地銀幹部)
周辺の地銀は指をくわえて見ているわけにもいかない。さらに低いレートを提示するなど、融資競争は低金利のスパイラルに陥り、生き残りを賭けた体力勝負の競争に突入しているのだ。
右の図を見ていただきたい。これは、北関東エリアの地銀、第二地銀の収益性と効率性をまとめたものだ。
これを見ればわかるとおり、規模が小さな茨城県の関東つくば銀行や茨城銀行、栃木県の栃木銀行、そして群馬県の東和銀行は、明らかに厳しい。
収益面では大きな差をつけられ、コストを削減しようにも人件費やシステム関連費用はどの銀行も同じようにかかるため、高コスト体質からも脱することができないでいるのだ。