組織のバックアップがなければ担当者の心は折れてしまう

 ネット社会では、さまざまな情報が行き交い、生理的な嫌悪感を抱かせる画像や動画を目にすることも多い。イメージ先行でクレームやトラブルが深刻化することも珍しくない。

 こうしたなかで、企業はクレーム対応を“進化”させてきた。事実、大手企業では、ネットを介したクレームへの対応がスマートになり、大きなトラブルに発展するケースは減少傾向にある。「クレーマー」という呼称を世に広めた「東芝クレーマー事件(1999年)」のような失態は少なくなった。

 しかし相変わらず、企業はクレーマーに悩まされている。それは、先に述べたように組織にはびこる「事なかれ主義」が一因になっている。そんな企業体質を変えない限り、クレーム担当者は疲弊するばかりだ。 

 もはや、「お客様のご不満を満足に変える」「クレームを感謝の言葉に変える」という建前だけでは、「クレームの現場」は立ち行かない。また、「悪質なクレームには毅然と対応する」というお題目を何回唱えても、組織のバックアップがなければ、担当者の心は折れてしまうだろう。