善意のお客様のクレームに、「スピーティに対応」することは大切だが、こじれたときに「スピード解決」を焦ることは絶対禁物。早く解放されたい、終わらせたいという焦りにつけこむ悪質なクレーマーもいるのだ。今回は行動原則その4「スピード解決を焦るな」

「短期戦」から「長期戦」に移行する

 クレーム対応では、絶対に「焦らない」ことが大切です。

前回ご紹介した「親身」の段階では、相手がヒートアップしないように、スピーディな対応が求められますが、「受身」「捨身」の段階に入ったら、腰を据えて相手の出方を見守る必要があります。

 車の運転にたとえれば、「親身」ではアクセルを踏んでいますが、「受身」ではエンジンブレーキで減速します。それは、じっくり相手を観察して、対応を誤らないためです。「短期戦」から「長期戦」に移行するわけです。

 そして、「捨身」の段階ではサイドブレーキを引いて、停止も辞さない構えを見せます。

 じつは、「受身」の段階で疲弊してしまうクレーム担当者が、とても多いように感じています。このとき、担当者がいちばん恐れていることは、クレーマーからの暴力ではなく、社会的なバッシングや組織内における責任問題です。

 誰もが携帯電話やスマートフォンを持ち歩くようになったため、担当者の不用意な発言や相手を突き放したような態度は、インターネットの掲示板やユーチューブなどを通して瞬時に広まってしまいます。それは組織にとって甚大なダメージとなるだけでなく、担当者個人の立場も危うくするでしょう。

 しかし、ここで解決を焦ると、クレーマーの思うつぼです。動揺する相手の隙をうかがって言葉尻をとらえ、過大な要求を押しつけてくるのです。

 トラブル発生直後のスピーディな対応は誠意の証しですが、そのあとの対応で解決を急ぐと、墓穴を掘ることになります。

 スピーディな対応とスピード解決とはまったく違うことを肝に銘じておいてください。