「ビッグスリーが本当に再生できると信じている米国人は、いないのではないか」

 昨年末、資金繰りに窮したゼネラル・モーターズ(GM)やクライスラーに対し、こんな辛らつな発言をしたのは、日本人ではない。米国系サプライヤーの米国人幹部。

 実際、政府による緊急融資が決定した際、現地メディアのインターネットの書き込みには「ブッシュは戦後最大の社会主義者だ」「GMにとってよいことは、米国にとって最悪なこと」など、手厳しいコメントが並んだ。

 実際、それを裏づけるような結果が出た。1月の米新車販売台数は、GMが前年同月比49%減、クライスラーは同55%減といずれも半減したのだ。

 唯一、つなぎ融資を受けなかったフォード・モーターも同39%減。同社の2008年決算は145億7100万ドル(約1.3兆円)の最終赤字であり、「このまま販売台数が減れば、米政府への支援要請を余儀なくされる可能性もある」(外資系証券アナリスト)。

 1月のオバマ政権発足以降、新政権がグリーンニューディール政策で、環境対策車の開発支援を前面に打ち出すなど、ビッグスリーには“追い風”となる報道も多く、業界内でも安堵感が漂っていた。

 だが、実態は違った。1月の米新車販売台数は、年換算で1000万台を下回り、中国に抜かれるという27年ぶりの低水準。米国市場とビッグスリーを取り巻く環境の厳しさをあらためて実感させる格好となった。

 米国市場の回復は「過去の景気循環から見ても、3~4年はかかる」(寺澤聡子・みずほ証券シニアクレジットアナリスト)、「GMの環境技術の成果が出るのは早くても3年後」(業界関係者)。

 環境技術と財務内容で遙かに優勢なトヨタ自動車でさえも、1月の米国販売が同32%減と苦戦するなか、ビッグスリーには明るさが見えない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  山本猛嗣)