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iPhone、ブラックベリーを超えた?
パームが投入する新携帯「Pre」の真価

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第30回】 2009年1月28日
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 2000年のドットコム・バブルのさなかに、3Comはパームを別会社としてスピンオフさせ、同時に華やかなIPOを演出するものの、バブル崩壊後に株は暴落。ハードウェアとソフトウェアを別会社にして、ソフトウェアは他社にライセンスできる体制を取った。その後ハードウェア会社がハンドスプリング社と合併、さらにソフトウェア会社を買い戻して再び一つの会社になったのが2005年のことだ。その間に、PDAからスマートフォンへとパームの製品も姿を変えていた。

 そんな紆余曲折を経てもパームの名前が生き続けているのは、画期的な技術を生み出すイノベーティブな企業という信頼がまだ強く市場に残っているからだ。それは、売却が噂され続けた挙げ句に、先鋭的なプライベート・エクイティー会社であるエレベーション・パートナーズが、40%の株式と引き換えに、これまで4億2500万ドルを同社に注入してきた理由でもある。

 だが、ここ数年のパームは明らかに進路を見失っていた。主力製品のTreoは改良を重ねて次々と新バージョンを打ち出すものの、そのデザインや機能はiPhoneやブラックベリーなどが厳しい競争を繰り広げるスマートフォン市場で相対的に古くさいものになっていった。

 2007年の第1四半期に23%だったシェアは、第4四半期には7.9%にまで下落。その後、苦し紛れに価格が100ドル以下という廉価版Centroを発売してシェアを13%以上に増やすが、その後iPhoneが登場してスマートフォン市場自体ががらりと変貌する。

 昨年末の時点では、ブラックベリーを開発するRIM(リサーチ・イン・モーション)が41%、アップルが23%、パームが9%という劣位に甘んじる結果となった。直近の四半期決算では、8000万ドルもの赤字を出した。

 そうした中でのPre登場。しかも、この製品には社運を賭けるパームの意気込みが感じられる。だが、現在の不況の中に船を漕ぎ出す同社にとっては、必ずしも追い風ばかりが吹くわけではない。また今年前半とした製品発売時期が年後半にずれ込む可能性を指摘するアナリストも少なくはない。

 大きな将来が約束されるスマートフォン市場ではあっても、勝者への道のりは決して平坦ではないのだ。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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