行動の結果をきちんと受け止め、
行動を変えていく

“後味の悪さ”を体験させなきゃ、<br />人なんて育ちませんよ。<br />――石坂典子×奥田健次対談【その3】奥田健次(おくだ・けんじ)
臨床心理士/専門行動療法士/行動コーチングアカデミー代表。常識にとらわれない独自の指導プログラムにより、さまざまな子どもの問題行動を改善させる行動分析学者。数万件以上の難問題を解決してきた手腕から「子育てブラック・ジャック」と呼ばれ、日本各地のみならず世界各国から指導依頼を受ける国際的セラピスト。『NNNドキュメント』『スッキリ!!』では、「今、最も注目されている教育者」として紹介。『あさイチ』他にも出演。著書に、『世界に1つだけの子育ての教科書』『拝啓、アスペルガー先生【マンガ版】』『叱りゼロで「自分からやる子」に育てる本』『メリットの法則』など。

奥田 会社の価値は子どもだけではなく、社員や周囲の人にもわかってもらわなくてはならないでしょう。そういう意味で幹部社員はどういうふうに選んだのですか?

石坂 父はすべて自分で決めて、思ったとおりにやりたい人でした。社員にも具体的なやり方を細かく指示していました。

奥田 僕はどちらかというと、そういうタイプです(笑)。

石坂 奥田さんは職人っぽいですよね。創造的で自分の力で完璧なレベルにまで仕上げたい人。人に任せるのはあまり好きじゃない。

奥田 そうですね。

石坂 私は自分だけでは仕事ができない。重機に乗ることもできないし、プラントのメンテナンスもできない。だから社員に頼らざるをえないんです。
 そのとき、どうしたら社員が楽しく働けるかなと考えた。仕事の楽しさは、自分で考え、行動し、実現することです。いろいろなタイプの幹部を選んで、それぞれのやり方を考えてもらう。たとえば、社内の巡回をさせても、それぞれ着目点が違うから、それを共有することで新たな課題発見ができます。

奥田 会社は変わっていきますね。

石坂 父から会社を受け継いで、変えていいものと、変えてはいけないものがあると思っています。永続企業という父の想いや、会社の理念は変えてはいけないと思いますが、時代も変化するし、会社も生き物なので変わっていかなくちゃいけない部分もあります。
 それに父の代に比べて社員数は倍以上になっていて、私が一人ひとりに「ああしろ、こうしろ」というのははなから無理。新しい価値をつくる人が必要になるし、一人ひとりが考えて行動する必要もあります。

奥田行動して、行動の結果をきちんと受け止めて、行動を変えていくというのは教育の大原則です。

石坂 私は子どもの教育も同じです。登校する前の持ち物チェックや宿題の確認なんかやったことがありません。忘れたらそれでいいじゃないと思っています。

奥田 筆箱を忘れたり、宿題を忘れたりすれば気まずい思いをする。でも、それでいいんです。後ろめたさ、後悔、後味の悪さを体験することで、行動は変わっていきます。

石坂 娘が小学3年のときに、カッターの刃で顔を切ってしまったことがありました。学校で男の子がカッターを振り回して、刃の裏が娘の頬にぶつかったんです。その夜、学校から電話がかかってきて、先生が謝っていたのですが、「私が子どもの手の届くところにカッターをおいてすみません」と言ったんです。
 私はそれは違うと思った。カッターをしまっておかなかったのが問題なのではなく、カッターの使い方を知らなかったのが問題。危険なものを、危険ではない使い方を教えるのが教育。それには体験させることが大切です。

奥田 すばらしいですね。私が親御さんたちに伝えていることそのままです。