改「善」と、改「革」の違いとは?

奥田 石坂さんがこれからこだわってやっていきたいことは何ですか?

石坂 先日、星野リゾートの星野社長にお会いする機会があったので、「おもてなしってなんですか?」とお聞きしたら、「こだわりを売ること」とおっしゃった。かっこいい言葉だと思いました。
 たとえば、お客様アンケートに「テレビを置いてほしい」とあっても、自然を楽しんでほしいから置かない。うちはどういう会社なんだ、自分はいったい何なんだと考えたときに、うちは廃棄物1つひとつを確認して料金を決めています。
 まとめて1年契約という処理業者がある中で、うちのようなやり方を殿様商売という人もいるけれど、当社はゴミ屋じゃなくてリサイクル業者。そこにはこだわりがあります。だからリサイクルできるかどうかで価格を決めるのは当然のこと。そこに共通の価値観を持ってくれているお客様がうちを選んでくれています。

奥田 僕は2012年に長野県西軽井沢に5000坪の敷地を買い取り、「行動コーチングアカデミー」を設立しました。発達障害、自閉症、不登校などの問題解決に関わる人材育成を行い、現在は、日本初の行動分析学を軸とした私立幼稚園の設立を準備しています(2014年6月に長野県に初申請)。

石坂 すばらしい。奥田さんは「改善者」ではなく「改革者」ですよ。改善というのは現状をよりよくするためにやること。改革はまったく新たなもの。100のものを101にするには改善が必要だけど、1000にするには「改革」が必要でしょう。

奥田 自治体とも話し合い中ですが、なんとか早く幼稚園を開設したいんです。現在は、長野県から指摘されたことを克服するために、『幼稚園設立準備会』を立ち上げました。

石坂 その施設で経営者の勉強会もできるんじゃないでしょうか。すばらしい経営者は自然を愛している。自然と対話して着想を得て、経営に活かしています。いろいろとコラボできるとよいですね。

奥田 そうですね。昨年、さっそく東京の大企業が新人研修でうちの施設を利用してくれましたよ。新人達で、先輩方と一緒になって掘っ立て小屋を立てて、そこで1泊2日の生活を送るという(笑)。

石坂 いろんな使い方ができそうですね。

奥田 うちも幼稚園ができたら、保護者と子どもらを連れて石坂産業へ見学ツアーに行かせてもらいたいです。今日はありがとうございました。

石坂 こちらこそありがとうございました。
(終)

<著者プロフィール>
埼玉県入間郡三芳町にある産業廃棄物処理会社・石坂産業株式会社代表取締役社長。99年、所沢市周辺の農作物がダイオキシンで汚染されているとの報道を機に、言われなき自社批判の矢面に立たされたことに憤慨。「私が会社を変える!」と父に直談判し、2002年、2代目社長に就任。荒廃した現場で社員教育を次々実行。それにより社員の4割が去り、平均年齢が55歳から35歳になっても断固やり抜く。結果、会社存続が危ぶまれる絶体絶命の状況から年商41億円に躍進。2012年、「脱・産廃屋」を目指し、ホタルや絶滅危惧種のニホンミツバチが飛び交う里山保全活動に取り組んだ結果、日本生態系協会のJHEP(ハビタット評価認証制度)最高ランクの「AAA」を取得(日本では2社のみ)。
2013年、経済産業省「おもてなし経営企業選」に選抜。同年、創業者の父から代表権を譲り受け、代表取締役社長に就任。同年12月、首相官邸からも招待。2014年、財団法人日本そうじ協会主催の「掃除大賞」と「文部科学大臣賞」をダブル受賞。トヨタ自動車、全日本空輸、日本経営合理化協会、各種中小企業、大臣、知事、大学教授、タレント、ベストセラー作家、小学生、中南米・カリブ10ヵ国大使まで、日本全国だけでなく世界中からも見学者があとをたたない。『心ゆさぶれ!先輩ROCK YOU』(日本テレビ系)にも出演。「所沢のジャンヌ・ダルク」という異名も。本書が初の著書。