話題の品川女子学院で、毎年、中3生を対象に実施している「やる気」に関するアンケートが興味深い。
親がよかれと思ってかけていた言葉が、実は子どものやる気をそいでいたとしたらどうだろう。
漆校長の新刊『伸びる子の育て方』でも一部を紹介しているが、先日、集計された最新データを漆校長に解説してもらった。

やる気をなくす言動、「不動の1位」とは

漆 紫穂子(うるし・しほこ)1925年創立、中高一貫の品川女子学院の6代目校長。わずか7年間で入学希望者が60倍、偏差値が20上昇。「28プロジェクト」は生徒たちの心にスイッチを入れた。世界経済フォーラム(通称ダボス会議)東アジア会議にも出席。2012年国際トライアスロン連合(ITU)世界選手権スペイン年齢別部門16位で完走。年齢別部門の日本代表に選抜。著書に『女の子が幸せになる子育て』など。現場教員歴約30年の講演は、お母さんだけでなく、お父さんにも大きな反響を呼んでいる。

「子どものやる気のスイッチはいつ入る?」というテーマで保護者にお話しする機会があります。
 そんなとき参考にしているのが、毎年、中3の生徒全員に協力してもらっている「やる気」に関するアンケートです。

 その最新版の集計を終えましたので、今回と次回の2回に分けて紹介したいと思います。まずは最初の質問から。

●質問1
「やる気がなくなった親の言動は?」

1位:「○○しなさい」 35.4%
2位:誰かと比較される 21.3%
3位:認めてくれない 9.6%
4位:「○○してはダメ」 8.9%
5位:「もっと頑張れ」 8.6%

その他の回答 16.2%
「自分の意見を押しつけてくるとき」
「話を最後まで聞かないで反論されたとき」
「無視されたとき」
「頑張っているのに、より高いレベルを求められたとき」
「受からなかったら、携帯とりあげられたとき」
「お礼を言ったら、敬語に言い直しをさせられたとき」
「約束していたことをなかったことにされたとき」
「筋が通っていないことを言われ、それを指摘したら逆ギレされたとき」

 この質問に対する回答のランキング上位は、毎年だいたい決まっています。
 多く挙がるのは、「○○しなさい」「早くしなさい」という命令です。
「部活で疲れて帰ったときに、『○○しなさい』と言われると、イラッとする」
「自分でもやることがわかっていて、やろうと決めているのに言われると、『あ~あ』という気持ちになる」
「やろうと思っているときに言われたら、もうダメです」
 と書いている子もいました。

 子どもをよく見て、その子のタイミングを大事にしてあげることが大切です。

 では、いつやるの? という子には、
「宿題、ごはんの前にやる? 後にやる?」
 と、せめて選択肢のある形で聞いてみてはどうでしょう。

 また、「○○してはダメ」という<禁止>の言葉も、子どものやる気を失わせます。
 今年の親御さんは、かなり気をつけていらっしゃるようで第4位でしたが、例年はもっと上位にきます。

「やってはいけない」と言われると、反発したくなるのがこの年頃。
「リビングで勉強してはダメ」「音楽を聴きながら勉強してはいけない」という家庭もありましたが、家族の視線があるリビングのほうがはかどるタイプや、音楽を聴きながらのほうが、能率が上がる子もいます。

 親と子どもは別人格。
親が当たり前と思っていることがお子さんにとって当たり前ではないこともあります。
 親の思い込みや押しつけがないかどうか、ときに点検してみることも必要かもしれません。