そろそろ新年度。新入社員研修の季節です。世界中のエリートが集まる、外資系投資銀行の新入社員研修を体験レポート! 『ビジネスエリートの「これはすごい!」を集めた 外資系投資銀行のエクセル仕事術』の著者・熊野整氏による連載第17回。

 拙著『ビジネスエリートの「これはすごい!」を集めた 外資系投資銀行のエクセル仕事術』は、もともと筆者が2013年10月から始めたエクセル研修セミナーの内容をベースに作成しています。

 エクセルセミナーは主に東京で週末に開催していますが、企業研修も開催しています。大手総合商社や大手通信企業など、大手企業も多い。

 日本企業は研修が充実していて素晴らしいと感じますが、一方で思い出すのが、私が外資系投資銀行のモルガン・スタンレーに新卒で入社した時の研修のことです。筆者がモルガン・スタンレーの新入社員研修を受けたのは2004年。ずいぶん昔の話です。

 新入社員は、国内研修3週間と、ニューヨーク研修3週間だった気がします。国内研修では、財務会計を中心に勉強しますが、特にビジネスマナーが厳しかった。名刺の渡し方、ミーティングにはメモを持っていけ、といった当たり前の話ばかりですが、講師が厳しかった印象がある。外資系投資銀行の新卒社員は海外の大学出身の者も多く、中には日本語よりも英語のほうが上手な社員もいる。そんな半分アメリカナイズされた新卒に対して、講師がガッツーンと日本のマナーを教育するのである。

 ちなみに研修後、そのアメリカナイズされた同期の新卒は、「日本のマナーすげえ!かっこいい!」と言っていた。お前は外国人観光客か!

 そんな日本文化体験ツアーが終わると、今度はニューヨーク研修です。モルガン・スタンレー投資銀行本部のニューヨーク・オフィスに、世界中の優秀な人材が集まるわけですが、これはもう鬼の棲み処でした。20歳でハーバードの大学院を卒業しましたとか、会計士と弁護士の資格を持ってますとか、筆者が同じ研修ルームにいていいのかしら? と思いました。

 そして研修もなかなか厳しい。現役のバンカー(投資銀行で働く人のこと)が講演するのだが、いきなり、「みなさん、今まで大学生だったわけですが、モルガン・スタンレーでは、期末試験の前日の夜の気持ちで、毎日仕事に取り組んでください」と言っていた。無理やろー!

 一方、研修以外のイベントも多かった。中には、マンハッタン島を一周するクルーズなんてものもありました。新卒にエリート意識を与えつつ、アメとムチを使い分ける研修だったように思います。

 新卒で入社すると、アナリストという職種になるのですが、3年間たつとアソシエイトに出世し、また研修が開催されます。新卒ニューヨーク研修で会った連中と、次はアソシエイト研修で会えるかなと思ったが、それは叶わず、新卒入社して1年が経つ頃には、ほぼ全員が投資銀行を去ってしまっていました。投資銀行は、優秀な頭脳が求められるのも事実ですが、資料作りといった地味な作業も多く、そういう体力仕事に嫌気が差す優秀な社員も少なくなかったように思います。

 筆者もパワーポイント、エクセル作業に追われていたときは、「こんなにエクセルばかりやって、何の役に立つのか」とばかり思っていましたが、その経験を活かして今はエクセルを教えているのだから、何事もがんばってみるべきだな、と思う次第です。