地方の親を呼び寄せて
介護する家族が増えている
地方に住む親が一人になったり、あるいはボケが進んで認知症が出始まると、都会で暮らす子どもを頼って引っ越ししてくることが多い。子どもが親を呼ぶので「呼び寄せ老人」と言われる。
故郷に家は残し、仏壇はそのまま。住民票も移さないので都会の高齢化率は変わらないが、高齢者の実数は増えていく。こんな現象が、地方の過疎化とともに大きな流れとなっている。とりわけ首都圏では加速している。
ライフスタイルの違いなどで親との同居が難しいと、近くのマンションに住んでもらうことになる。遠距離でなく近隣介護であれば双方に都合がよく納得しやすい。
だが、その介護者たちは、常に不安を抱えている。もし、急に自分がその夜帰宅できなくなったら、あるいは親が急に自宅生活が難しくなったら、親の預け先はあるのだろうか、という不安だ。仕事上での急な残業や出張、あるいは海外出張、それに遠くへの冠婚葬祭など自宅を離れねばならい状況は多い。
50代の独身会社員がその親の介護を任されている家族形態は多い。たとえ、家族が居ても、親の介護は実の息子や娘がキーパーソンである。
誰しも、最期まで自宅で生活を送りたい。家族も、できれば近くにいて常に支えてあげたいと思う。
とはいえ、現実は「もしもの時」を考えて自宅や近隣介護を諦めて施設入所に走りがちだ。2000年4月に介護保険が施行されて以来、自宅から施設に移る要介護者が増え続けている。施設入所を望んでも満員でかなえられずに、待機している高齢者が全国で52万人にも上る。
自宅でずっと暮らし続けられそうもない。そんな不安を解消できる介護サービスが必要とされている。4月から新制度になった介護保険がこの課題にどのように応えてくれるのか。