病巣は想像以上に根強い――。
世界の二大現象が原油暴落と金利「水没」に

原油安経済は、資源ブームや新興国ブームの終焉を意味するPhoto:underworld-Fotolia.com

 今日の異例な世界経済の状況を象徴する2大現象は、原油価格暴落と世界の金利「水没」という状況ではないか。

 原油安経済は、資源ブームの終焉や新興国ブームの見直しをもたらしているだけでない。金融面で、原油安にともなう物価の下落に対処すべく各国中央銀行は異例の金融緩和に踏み切って、有史以来のマイナス金利(金利水没)をもたらしている。

 それは、事実上の通貨戦争であり、原油安経済は「金利水没競争」をもたらした。しかし、原油価格下落からの道筋も、世界の「金利水没」からの出口もまだ見つかってはいない。それは、世界経済全体の病巣が予想以上に根強いことを示すものと言える。

 図表1で示されるように、先進国の需給ギャップは2007年を大きな転換点とし、その後、足元に至るまで大幅なマイナスを抱えた状況が続いている。その背景には、日本が1990年代から続くバランスシート調整にあるなか、欧米も2007年のサブプライム問題、翌年のリーマンショック以降、日米欧の先進国が同時にバランスシート調整に陥る大恐慌以来の局面を迎えたことにある。

 米国はその調整から出口を見つけつつあるが、依然世界全体では大きな後遺症を抱えた状況が、今日の世界経済の真実だ。

(注) 先進国は、米国、ユーロ圏、日本、英国、韓国、カナダ、オーストラリア、台湾の各国実質GDPを2010年基準で指数化し、PPPベースGDPの2010年シェアで合成。2014年以降の日米欧はみずほ総研の予測、その他はIMFの予測を使用。 潜在GDPはHPフィルターで算出。
(資料) IMF、各国統計より、みずほ総合研究所作成