約束の価値は、結果か、行動か
インフレ目標はまだ有効

日銀がインフレ目標をどう考えるかは、マーケットでも大きな関心事だ
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 2013年4月、新しく日銀総裁に就いた黒田東彦日氏が、「異次元緩和」あるいは「黒田バズーカ」と称された大がかりな金融政策を発表してから、丸2年が経過した。

 当時、消費者物価の上昇率を「2年で2%」に持っていくことを目標として掲げたが、現実の消費者物価上昇率は、昨年の5月に3.4%まで上がったものの、今年の2月では2.0%と、消費税率の引き上げ分の影響を2%とするとほぼゼロまで戻っている。物価目標は現時点では未達と言わざるを得ない。これをどう評価すべきか、様々な意見が交わされている。

 異次元緩和を含むアベノミクスの政策パッケージ全体としての「効果」を考えると、失業率は顕著に低下したし(2012年度末4.3%→今年2月3.5%)、物価上昇率も2012年度末の前年比▲0.2%よりは好転しており、効果はプラスだったと評価していいだろう。

 他方、「2年で2%」が実現しなかったことで、今後、日銀のアナウンスメントの効果が薄れるのではないか、という批判がある。

 経済の環境として「年率2%程度の物価上昇率が現実にも人々の期待にも定着することが望ましい」というのは、今でもその通りだと考えておくべきだろう。目標が実現できた方が今後の日銀の情報発信が信用されるだろうから、今後の金融政策がやりやすくなる。これはその通りだ。

 黒田総裁が説明の際に強調する原油価格下落という予想外の外的要因があったとしても、通貨の価値を上手に落とすことができたなら、より望ましかったとは言える。

 2%のインフレ目標は、「2年で実現する」という期限の目処に関して結果を出すことはできなかったが、一方で、「物価上昇率が2%に達するまで政府・日銀が金融緩和を継続する」という行動の意味での約束は守られているから、現在でも一定の有効性を持っている。

 インフレ目標が今後の金融政策を縛る効果があるからこそ、ここまでの円安になったし、それによって株価と景気(特に雇用)に対するプラス効果があった。政府・日銀が「2%」の目標を降ろさないことは、適切であるし、必要でもある。