だから香織さんは「目上の人が、わざわざ私に声をかけてくれるなんて」と優越感を持ち、松本氏に好意を抱くわけです。つまり、上司は「特別な存在」として差別化されており、そのことは不倫カップル成立への足がかりとなるのです。

 最後に「接触回数の多さ」です。これは職場外と職場内を比較すれば、明らかです。2人の職場が別々だと日程の調整が必要ですが、同じ職場なら仕事中はずっと一緒にいるのだから、それは不要です。上司と部下の接触回数が多ければ多いほど、それに比例して上司が愚痴をこぼす回数も増え、そのぶん部下が上司に好意を抱き、2人の距離が縮まっていく……。その「右肩上がりのグラフ」は不倫全般に適用できますが、職場不倫の場合、そのグラフの曲線はさらに上向きであり、2人の距離が縮まるスピードも速いのです。

 私は男女間のトラブルについて、過去10年で約1万件の相談を受け持ってきましたが、今までの相談のなかで圧倒的に多かったのは「不倫」で、相談者の大半は不倫を「された側」でした。

壊れた夫婦関係の修復は無理
「慰謝料」へと頭を切り替えよ

 それでは不倫の場合、「された側」が「した側」に対して請求できるものは何でしょうか。具体的には謝罪と関係解消、そして慰謝料の3つです。何を請求するのかは時と場合によって変わってきますが、今回の場合、請求のタイミングは離婚「後」なので、謝罪と関係解消については割愛し、「慰謝料」に焦点を絞ることとします。慰謝料とはどんなものなのか、妻に不倫をされた夫が妻や不倫相手に対してどうやって慰謝料を請求すべきかを、解説して行きましょう。

 ここで言う慰謝料とは、不倫のせいで夫婦が離婚に至った場合、不倫相手が家庭を壊したのだから、それをお金で弁償してもらうという意味です。ただし、当事者が本当に望んでいるのは慰謝料よりも原状回復(壊した家庭を元に戻すこと)です。壊したものを元通りに直さなければならないというルールは幼稚園児が幼稚園で習うことであり、本来松本氏のせいで夫婦は離婚に至ったのだから、松本氏は夫婦が離婚する前、つまり結婚している状態に戻すのがしかるべき責任の取り方です。

 しかし、離婚した夫婦が再度婚姻(再婚)するには相手方(智子さん)の承諾が必要です。あくまで智子さん次第であり、松本氏が独断で決めることはできません。今回のケースでは智子さんの方から離婚を切り出したのだから、大介さんとの再婚の可能性は限りなくゼロです。