上司を変えようとするのは、
最悪のアプローチ
とはいえ、いくらプロに徹しても、「嫌い」な相手と接するのは苦痛です。しかも、その気持ちはどんなに押し殺しても、相手には伝わってしまうものです。
たとえば、書類の些細な不備を発見しては、ネチネチと指摘する上司は不愉快なものです。しかも、細部にこだわりすぎるがために、本質的な議論が十分にできないと、なおさら不満が募ります。そして、その気持ちが上司にも伝わって、険悪な空気を生み出してしまうことになるでしょう。
このようなときに、最悪なのは上司の欠点を指摘することです。
「失礼ですが、細部にこだわりすぎではないでしょうか? 私は、もっと本質的な問題について部長のお考えをお伺いしたいのですが……」などと、いくら丁寧に伝えても、上司は気分を害するだけです。
当たり前のことですが、誰でも自分の欠点を指摘されるのは嫌なものです。しかも、役職が上がれば上がるほどプライドは高くなりがちです。部下からその欠点を指摘されて平常心を保てる人物などいないと考えておいたほうがいい。
なかには、「私に悪いところがあったら、正直に言ってくれ」などと言う上司もいますが、その言葉も真に受けないほうがいいでしょう。懐の深いところを見せようとしているのでしょうが、実際に指摘されれば、表面は取り繕っても、まず間違いなく内心ではムッとしているはずです。その指摘が鋭ければ鋭いほど、あなたを敵視し始めるに違いありません。
そもそも、人を変えようとすることが間違いです。
それは、自分の胸に手を当てればわかるはずです。相手が親であろうが、上司であろうが、欠点を指摘されながら「こうしなさい」と言われれば、反感が募るだけで、より頑(かたく)なになったのではないでしょうか? 人を変えようとすれば、抵抗を受けるだけなのです。それを上司に対して行って、成功するはずがありません。
人は変わらない──。
これは、社内政治を進めるうえで、忘れてはならないポイントです。
むしろ、上司に欠点があることを前提に、いかに良好な人間関係をつくるかを考えるべきなのです。