社内政治――。ネガティブな印象をもつ言葉ですが、実は「政治力」がなければ管理職は務まりません。どんなに優れたアイデアがあっても、どんなに理想が高くても、組織を動かせなければ何ひとつ実現できないからです。部署間対立、横暴な上司、反抗的な部下……。こうした「現実」のなかで、いかに社内政治を生き抜くか?『社内政治の教科書』の中から、その鉄則を紹介します。
組織を動かしているのは「パワー」である
組織を動かしているのは「権力(パワー)」です。
権力を背景にすべての物事は決し、権力を背景に構成員にその実行を強いるわけです。よくも悪くも、それが組織統治の原則です。
そして、「課長」は、その権力構造の末端に位置する役職です。
組織の規模にもよりますが、そのパワーはごく小さなもの。いわば、大海に浮かぶ一艘(いっそう)の小舟のようなものです。潮の流れには逆らえませんし、突風が吹けば転覆します。また、順風のときと逆風のときでは、帆の張り方も違うでしょう。きちんとした航海術を身につけなければ、目的地にたどり着くことはできません。
そのためには、まず「海図」や「気象図」を手に入れることです。
すなわち、社内全体の組織構成を把握したうえで、そのパワー・バランスを把握しなければならないのです。
【パワー・バランスをつかむ方法(1)】
まず、組織図を広げてください。いわば、これが「海図」です。これを頭に叩き込まないことには、何も始まりません。そのうえで、パワーの在り処を洞察していきます。「海図」のうえに「気象図」を上書きしていくイメージです。
パワーの指標は、次の3つ。
1 人事権
2 予算(事業規模)
3 人員数
このうち、パワーの根幹を成すのは「人事権」(=人事への影響力)です。
構成員の人員配置を司り、左遷や解任・解雇などの強権も有する人事権こそが、権力者の最大の武器だからです。ただ、上層部において誰が人事についてもっとも影響力をもつのかは、課長からは見えにくいことも多いでしょう。
そこで、重要になるのが予算と人員数です。
予算と人員数は、人事権と密接に結びついています。人事に影響力をもつ部門は人員数を増やことができ、人員数は人件費(予算)にかかわってきます。だから、人事権と予算はセットで配分されるのが通例なのです。つまり、予算と人員数という顕在化している数字を把握することで、パワーの根源である人事権(=人事への影響力)の在り処を探ることができるということです。
組織図の上に、部門ごとの予算や人員数と、その部門を牛耳る人物の名前を書き込み、それを眺めながらパワー・バランスを推測すると見えてくるものがあるでしょう。