社内政治――。ネガティブな印象をもつ言葉ですが、実は「政治力」がなければ管理職は務まりません。どんなに優れたアイデアがあっても、どんなに理想が高くても、組織を動かせなければ何ひとつ実現できないからです。部署間対立、横暴な上司、反抗的な部下……。こうした「現実」のなかで、いかに社内政治を生き抜くか?『社内政治の教科書』の中から、その鉄則を紹介します。

増加する「中立派ビジネスマン」

「派閥」という言葉にはネガティブな印象がつきまとっています。

 なかには、派閥を「悪の権化」のように捉えている人もいます。たしかに、派閥活動がエスカレートすると、社長のポストをめぐって派閥抗争を繰り広げたり、既存事業の存在を脅かす新規事業を妨害する裏工作を行うなど、組織全体の利益を損なうような事態を招くこともあります。その一面だけを取り上げれば、「派閥は百害あって一利なし」と考えるのも無理はないかもしれません。

 そのせいもあって、近年は、若手を中心に、派閥と距離を置く「中立派」や、派閥にかかわらない「孤高の存在」をめざすビジネスマンが増えているようです。派閥内の人間関係に縛られることを煩わしく感じているのも、その一因となっているでしょう。高度経済成長期には「派閥に入るのが当たり前」だったことを思えば、隔世(かくせい)の感がします。

 この変化に大きな影響を与えた人物がいます。
 1983年に連載の始まった青年漫画の主人公、島耕作です。当時、課長だった彼は、「出世したいなら○○部長の派閥に入れ」と初芝電器産業の役員に誘われたにもかかわらず、「私はどんな派閥にも属さない主義なのでお断りします」と明言。その後、派閥争いの間でもまれながら、理不尽な異動にも負けず、一貫して「中立派」として戦い抜きました。そして、2008年には『社長・島耕作』の連載がスタート。ついに、社長にまで登りつめたのです。

 この間、国政の世界でも「派閥解消」が強く叫ばれました。小泉政権や民主党政権が成立した一因には、彼らが「脱派閥」を唱えたこともあったといわれています。いわば、「脱派閥」は時代の“正義”だったのです。おそらく、この風潮も派閥から距離を置くビジネスマンの増加に影響を与えたのではないかと、私は考えています。