タスクフォースが前提の
組織作りをした真田幸村
家康以上に戦乱に勝ち抜くことに長けていた信玄には、“武田二十四将”と呼ばれる家臣団がついていました。二十四将のなかには真田幸隆の名前もありました。信濃国小県群真田(現在の長野県上田市)を本拠とする真田家は、武田家の庇護のもとで小豪族にのし上がったのですが、なかでも真田幸隆は上杉謙信と武田信玄の合戦の最前線に配置され、川中島などを舞台に上杉軍を圧倒したことで勇名を馳せた武将です。
その幸隆の孫が真田信繁です。真田幸村、といったほうが通りがいいですね。幸村は“真田十勇士”を率いていたことが知られており、猿飛佐助、霧隠才蔵、三好清海入道、三好伊三入道、由利鎌之助、筧十蔵、海野六郎、穴山小助、根津甚八、望月六郎といった、いずれもユニークな家臣たちがこの英雄的武将の人気を側面から支えました。
2016年1月からは、その幸村を主人公にしたNHK大河ドラマ「真田丸」が放送される予定です。幸村役には「半沢直樹」で一世を風靡した堺雅人の起用が決定しており、戦国屈指の人気武将と当代きっての実力派俳優の組み合わせは、今後なにかと話題を提供してくれそうです。
いってみれば、真田十勇士は異常な状況下において、異能を発揮する特別技能集団なのである。幸村はそれをうまく編成した。つまり、「それぞれの異能の特性をみきわめ、それに見合った仕事を与えた」
といえる。いわば組織内における“タスクフォース”あるいは“臨時編成のプロジェクトチーム”である。したがってタスクフォースやプロジェクトチームの宿命である、
「目的が発生したときに編成され、目的が達成されると解体される」
という宿命を持つ。時限的な集団だから、その編成期間中には手抜きをせずに全力を注ぐ。それが、
「完全な生命燃焼をおこなう」
ということなのである。(138~139ページ)
ところで、かれこれ5~6年前になりますが、「戦国武将ブーム」「歴女ブーム」が喧伝されたことを覚えていますか。
戦国武将をキャラクターにしたテレビゲームソフトや漫画が火付け役となり、武将をモチーフにした家紋入りTシャツや帽子などの関連商品がヒット。戦国武将のコスプレが人気をさらい、武将ゆかりの地には多くの女性客が駆けつけました。
2015年は、元和2年(1616年)に亡くなった徳川家康の没後400年目にあたります。これを記念して、東京都江戸東京博物館では3月末より「大関ヶ原展」を開催しています。世界文化遺産に登録された国宝姫路城の平成の大修理も終了し、こちらも3月末から一般公開が始まりました。これを契機に「城めぐり」が活発化するかもしれません。同じく3月に発売された週刊朝日ムック「武将の末裔――史上初!子孫52人の秘話と秘宝」が好評を博し、増刷が決まったそうです。このような流れが大河ドラマ「真田丸」につながっていけば、戦国武将ブームが再来するかもしれません。
ともあれ、ビジネス=戦(いくさ)であるとしたら、本書に登場する30人の名将たちのビヘイビアは、現代のビジネスマンに必ずや多くの有益な示唆を与えてくれるに違いありません。とりわけ、ビジネス現場という戦場において孤独な決断や判断を迫られるような場合に、戦国武将の対処方法はあなたの背中をやさしく押してくれるかもしれません。歴史のなかから現代に通じる実学を執筆し、新境地を拓いた童門冬二氏が本書を著した狙いもそこにあります。