生活者の安心・安全に関わる懸念が生じた場合、官庁やマスメディアはこれを冷静に判断し、本当に安心・安全に関わる問題なのか否かを判断しなければいけない。

 つまり、

 ・生活者へのリスクが、すでに生じているのか否か
 ・今後生じる可能性がどれくらい高いのか
 ・生じた場合にリスクは自然界に存在するリスクと比較してどれくらい高いのか

 という点での判断とその結果の公表を行う必要がある。

過度な「安全志向」の高まりは
消費財業界を萎縮させてしまう

 しかし今日の消費財業界は、そのような理性的な判断を下してもらえる環境にはない。生活者の安心・安全に悪影響を与える懸念が生じた時点で、メーカーに対するバッシングが起こってしまうからだ。

 その結果、実質的には生活者の安心・安全に与える影響が微弱だったとしても、そのブランド、または企業の存続が一夜にして困難になるリスクに、常に消費財メーカーはさらされる。

 このような風潮に対して、マスメディアも財界も官庁も過度なバッシングに警告を発することはなく、むしろ同調している状況では、消費財業界は慎重の上にも慎重にならざるを得ない。

 研究開発、原材料調達、製造、物流の工程で安心・安全に配慮することはもちろんのことであるが、マスメディアや消費者団体との十二分なコミュニケーションの確保、何らかの懸念が生じた場合の危機管理手順の整備、企業トップへのコミュニケーション教育の徹底などを十二分に行なわなければいけない。

 以上のように、消費財業界にとって重要な不確定要素となるのは、「経済/規制」と「社会/生活者」の2つの分類においてである。その中でも社会/生活者分類での消費財への支出意欲の低下と「安心/安全」への過剰な追求が特に注目すべき要素である。

 この2つの不確定要素に対する柔軟性を保つ戦略の立案が、消費財業界にて求められる。

(デロイト トーマツコンサルティング パートナー 矢矧晴彦)