パ・リーグから1週遅れてセ・リーグが開幕したが、熱心なファンでなくても東京ヤクルト-巨人の開幕3連戦に注目した人は多いのではないだろうか。

エースと4番を奪われた意地か?
王者・巨人に一矢報いたヤクルト

 昨シーズン、ペナントレースは制したもののプレーオフで中日に敗れ、日本シリーズ出場を逃した巨人は、よほど悔しかったのだろう。なりふり構わぬ補強を行った。16勝をあげてセ・リーグ最多勝投手になったグライシンガー、最多の204安打を打ち122打点で打点王に輝いたラミレス、31セーブをあげたクルーンを獲得したのである。

 対するヤクルトは昨シーズン最下位。不振のチームの中にあって目覚ましい活躍をしたのがグライシンガーとラミレスだ。残って欲しかったが、好成績をタテに大幅な年俸アップを要求され契約を断念。その2人を巨人は獲得した。

 優勝チーム対最下位チーム。しかも巨人は最下位チームからエースと4番を奪った。勝ち組対負け組ともいえる対戦だ。常識的に考えれば巨人が圧倒的に優位。3連勝して当然だ。が、結果は真逆になった。ヤクルトが3連勝したのである。

 ヤクルトのチームリーダー・宮本慎也は開幕前、こう語っていた。

 「ウチは先を見て戦えるチームではない。開幕の巨人戦にすべてを賭けるつもりで、3つ勝ちにいく」と。チームメイトにも相当檄を飛ばしたようだ。戦力的に雲泥の差があることは自覚している。ここで大方の見方通り惨敗したら、チームにあきらめの気持ちが生まれ、巨人だけでなく他のチームにも勝てなくなる。そうならないようにするためには、開幕の巨人戦3連勝しかないというわけだ。

 一方の巨人は先を見た戦いをした。第2戦のグライシンガーはともかく、開幕戦の先発はエース上原浩治ではなく高橋尚成。第3戦は一軍0勝の栂野雅史を起用した。次節に組まれているライバル中日戦のために上原、内海哲也、金刃憲人を温存したのだ。

 ヤクルトは高校球児のように「負けたら終わり」の気持ちで開幕に臨んだ。巨人は、先を見た大人の試合をしようとした。この気持ちの差が結果に表れたといえる。