ところが、6月2日だった実施日の数日前になって、家電メーカーの電子情報技術産業会(JEITA、会長・庄山悦彦日立製作所会長)」と、著作権者(権利者)の団体がそれぞれ相次いで記者会見を行い、お互いの不満をぶちまけたため、ダビ10が暗礁に乗り上げたのだ。6月17日の経済産業省と文化庁による合意の発表も、こじれてしまった関係をほぐすには至っていないのが実情だ。

混乱の責任を負うべき
真犯人は誰か

 いったい、なんでこんなことになってしまったのだろうか。率直に言えば、混乱の責任を負うべき関係者は5人(者)いる。

 第1の責任者は、昨年8月、ダビング10の導入を打ち出した総務省の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会(デジ検)」だ。同委は、2011年に迫ったアナログ地上波放送の停止・地デジへの完全移行の接近を最大の転機として捉えて、著作権法抜本改正などの懸案とダビング10問題を切り離すことによって、入り組んだ権利関係を調整し、不可能と思われたダビング10の実施に道を付けた功労者だ。

 ただ、その一方で、同省の幹部でさえ「やや詰めが甘かったと言われると、返す言葉がない」と話している面が存在することも見逃せない。というのは、報告書は、ダビング回数の拡大に応じた権利者への対価(関係者の間では、「補償」と呼ぶ。メーカーが機器価格に上乗せして消費者から集め、権利者に払う仕組み。350円程度になる予定だった)について、「適正な対価」と記しただけで、具体的に、どのような方式で、いくら程度を想定するかといったことまで踏み込んで合意形成をしなかったからである。これらの点は他省庁の権限に属することから、同省がその縄張りに配慮したことが仇になったと言えなくはないのである。

 第2の責任者は、文化庁の「私的録音録画小委員会」である。オンゴーイングで著作権法の抜本改正を手掛けていたことから、同庁は、地デジ、つまり録画の一部だけが対象という総務省のデジ検のコンセンサスをもう少し拡大しようと試みた。すなわち、「録画と録音を区別する理由はない」と主張したのである。ところが、これは、録画機だけでなく録音機に内蔵されているHDDが補償の対象(文化庁は「パソコンのような汎用機のHDDは対象外だ」と説明していた)になることを意味する。つまり、米アップル社のiPodなどの録音機も補償の枠組みに加えようということに他ならない。論理的に考えればわかることだが、地デジ限定で成り立っていた薄氷の合意を拡大するには、「配慮不足で、安易だ」(関係者)と言わざるを得まい。