突如HSBCが本社移転を表明
課税強化とEU離脱が原因か

 2015年4月24日、英国銀行業界に激震が走った。英銀行最大手HSBCが英国外への本社移転を検討していることを明らかにしたのだ。これに続く5月5日には、同行のガリバー最高経営責任者(CEO)が、数ヵ月以内に本社移転に関する決定を下すことを明らかにしている。

本社を英国外に移すという仰天計画が持ち上がっているHSBC。課税強化とEU離脱が原因と見られる
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 さらには、ロイター通信が消息筋の話として伝えたところではHSBCだけでなく、同じく大手のスタンダードチャータード(スタンチャート)銀行も英国外への本社移転を検討しているという。

 消息筋らによると、両行ともアジアに拠点をシフトする可能性を踏まえ調査を行っているもようだ。

 なぜ英銀大手がそろって国外に本社を移転するという”奇策”を検討しているのだろうか?背景には、英当局からの課税圧力の強まりがあるという。また、欧州市場におけるリスクの高まりと、アジア市場のビジネス機会の増大も、本社移転を促す要因になっているように見える。

 欧州市場におけるリスクとは、英国の欧州連合(EU)離脱の可能性が高まっていることだ。

 5月7日に実施された英議会下院選挙では、与党・保守党が過半数を確保した。これが意味するところは、英キャメロン首相が打ち出したEU加盟継続の是非を問う国民投票が2017年末までに実施される、ということである。英国内で欧州からの移民に対する反対感情が高まっていることを踏まえると、英国がEUから離脱する可能性は十分にある。