チェルノブイリ事故研究の
専門家から見た日本の原子力政策
5月19日、「国際原子力シンポジウム」が東京で開催された。主催は日本エネルギー経済研究所や東アジア・アセアン経済研究センターなどで、国内外の女性有識者17人が登壇。「女性が語る原子力─なぜ必要か、なぜ安全か、なぜ他にないのか」をテーマとして議論が交わされたようだ。
私はこのシンポジウムを直接聴講することはできなかったが、後日、登壇者の方々と個別に懇談させていただいた。その中の一人が、英国の分子病理学専攻の著名な研究者で、同国インペリアルカレッジ・ロンドンのジェリー・トーマス教授である。
トーマス教授は、これまで長きにわたって、1986年4月に起こった旧ソビエト連邦(現ウクライナ)のチェルノブイリ原子力発電所事故の国際学術共同研究に従事。2011年3月の東日本大震災による福島第一原子力発電所事故の後は、英国における放射線リスクコミュニュケーションや、チェルノブイリ事故の教訓をもとにした放射線と甲状腺がんについての啓発活動を行っている。
5月20日、私はトーマス教授と懇談する機会を得て、福島事故後における日本の原子力政策についての御意見を伺った(以下、質問は筆者)。
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──福島事故により、日本では、事故を起こした福島第一原子力発電所だけでなく、国内の全ての原子力発電所が停止したままだが、この状況をどう見るか?
福島事故後、原子力への不安が蔓延したのは日本だけではなく、ドイツでも同じだった。もっとも、全ての原子力発電を停止し、化石燃料を輸入しながら火力発電で何とか維持しているというのは、他の国ではとてもできないことだ。日本はそれを実行している。