クラウドコンピューティングは、ICTベンダー自身にも従来の製品販売からサービス提供へと、ビジネスモデルの大きな転換を迫る。果たしてベンダー各社は、どのような事業戦略を描き、激戦市場を勝ち抜こうとしているのか。今回は、アマゾンデータサービスジャパンの取り組みを紹介する。

パブリッククラウドのメリットを
最大限活用できる仕組み

アマゾンデータサービスジャパンの長崎忠雄 代表取締役社長 Photo:DIAMOND IT & Business

「ここ数年間で、私どものサービスが急速に広がっているのを実感している」

 アマゾンデータサービスジャパンの長崎忠雄社長は、最近のビジネス状況についてこう語った。同社が手掛けているのは、米アマゾン・ドット・コムのクラウドサービス部門であるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の日本国内での事業展開だ。AWSはサーバやソフトウェアを不特定多数が共有して利用する「パブリッククラウドサービス」分野で最も注目されており、とくにハードウェアを中心としたICT資源をサービスとして提供する「IaaS(Infrastructure as a Service)」市場で圧倒的な存在感を持つ。その強さの源泉はどこにあるのか。

 まずは、現在のAWSのサービスラインアップを紹介しておこう。【図1】に示した通り、インフラ層からアプリケーション層までさまざまなサービスを提供しており、その数は40種類を超える。AWSというとIaaSのイメージが強いが、【図1】のように、ソフトウェアの開発・実行基盤である「PaaS(Platform as a Service)」や、アプリケーションソフトウェアを利用する「SaaS(Software as a Service)」に相当するサービスも豊富に取り揃えている。

 だが、AWSのサービスはIaaSやPaaSといった区分ではなく、すべてが「AWSを活用するためのマネージドサービス」と位置付けられている。実は、そうした考え方にAWSのクラウドに対するこだわりがうかがえる。

【図1】AWSのサービスラインナップ(出所:アマゾンデータサービスジャパンの資料