クラウドコンピューティングは、ICTベンダー自身にも従来の製品販売からサービス提供へと、ビジネスモデルの大きな転換を迫る。果たしてベンダー各社は、どのような事業戦略を描き、激戦市場を勝ち抜こうとしているのか。今回は日本オラクルの取り組みを紹介する。

パブリッククラウドサービスを
本格的に全面展開

日本オラクルの杉原博茂 取締役 代表執行役社長兼CEO Photo:DIAMOND IT Business

「2020年までにナンバーワンのクラウドベンダーになる」

 日本オラクルの杉原博茂社長がこのビジョンを掲げたのは昨年4月。自身の新社長就任会見でのことだ。とはいえ、当時はオラクルのクラウド事業の全容が明らかになっておらず、「本気なのか」との声が顧客やパートナー企業から聞かれた。

 そんな見方を払拭したのが、米オラクルが昨年9月に米国サンフランシスコで開催した「Oracle OpenWorld」、さらに日本オラクルが今年4月に都内で開催した「Oracle CloudWorld」である。

 オラクルはこれらのイベントで、ハードウェアを中心としたICT資源をサービスとして提供する「IaaS(Infrastructure as a Service )」、ソフトウェアの開発・実行基盤である「PaaS(Platform as a Service)」、アプリケーションソフトウェアを提供する「SaaS(Software as a Service)」、さまざまなデータを提供する「DaaS(Data as a Service)」からなるパブリッククラウドサービスを整備して一堂に見せ、本格的に事業展開していくことを明確に打ち出した。(下図参照)

オラクルのパブリッククラウドサービスの全体像(出所:日本オラクル資料)

 さらに、米オラクルの創業者であるラリー・エリソン会長兼CTO(最高技術責任者)やマーク・ハードCEO(最高経営責任者)もこれらのイベントで、「ナンバーワンのクラウドベンダーを目指す」姿勢を鮮明にした。

 杉原氏はOracle CloudWorldの記者会見で、「オラクルは世界第2位のSaaSベンダーであり、SaaS、PaaS、IaaS、DaaSのすべてを包括的に提供できる世界で唯一のクラウドベンダーだ。これらを合わせたパブリッククラウドサービスの売上規模はグローバルでこの半年において10億ドルを超え、このままのペースでいけば年間で20億ドルを超える形になる」と、急速な勢いで事業が拡大していることを強調した。

 さらに同氏は直近の四半期(2015年度第3四半期:2014年12月~2015年2月)において、新規顧客数がSaaSで800社、PaaSで400社に達し、とくにSaaSにおけるERP(統合業務ソフトウェア)クラウドの累計顧客数が1000社を超えて同分野で最大規模のサービスになっていると、伸長著しい事業の中身を明らかにした。