ときどき次のような相談を受けます。

「この製品を東南アジアに売り込みたいのですが、日本で生産して向こうにもって行って販売しても利益が出ません。だから、まずは東南アジアに工場を建設しようと思うんです」。

 ですが、これは無謀というものです。

 まだ製品が売れるか、売れないかまったくわからない状況で、莫大な投資が必要な工場建設はリスクが大きすぎます。まかり間違えば、日本本社が傾きかねません。

 ここで言っておきたいのは、私は東南アジアに工場を持つこと自体を否定しているわけではない、ということです。会社および市場の全体的な状況から判断して、「フィリピンに工場を作った方がよい」という判断はありえるでしょう。

 私が問題にしているのは「フィリピンにモノを売り込む目的で、フィリピンに工場を作る」という“目的”の部分です。それはリスクが大きすぎはしないでしょうか。

エンドユーザーでなく販売代理店を訪れるメリットとは?

 まずは販売先を確保することが先決です。そして、販路開拓の第一歩は、海外に適切な販売代理店をみつけることです。その候補会社とミーティングの場を設けて、提携の可能性を協議するだけでも大きな情報が得られます。

 多くの場合、当該国で複数の販売代理店候補の言うことは一致するからです。どの製品に可能性があるか、どういった市場に売り込めるか、製品の機能や形状や色が適切かどうか、といった点については、まるで打ち合わせしたかのように一致する場合が多いのです。

 もちろん、エンドユーザーに直接にアプローチできればよいのですが、エンドユーザーにとっては知らない日本企業からのアプローチはただの売り込みにすぎません。「売り込み」と分かった瞬間にドアを閉めてしまう人が多いのは世界のどこでもいっしょです。特に、海外の聞いたこともない中小企業からの売り込みなど、一顧だにされないのが普通でしょう。

 エンドユーザーではなくビジネスチャンスを探している販売代理店候補だからこそ、こういったミーティングが可能になるのです。では、どんな販売代理店があるのか、自社の製品や体制に合う販売代理店はどのように選べばいいのか、次回以降でご紹介していきます。