みずほ信託銀行社長 野中隆史 みずほ銀行から社長に転じて4ヵ月間、業務はもちろん、資産の中身や貸し出しの状況などを細かく見てきたが、きわめて質がよい。

 景気の先行きに不透明感が漂うなか、各行が不良債権の増加に伴って引当金を積み増しているのに対し、引当金が戻ってきているほどだ。

 バブル崩壊後、経営危機に陥ったため根底から見直したことが大きいが、それ以降の努力が徐々に果実となって表れている。

 とはいえ、まだ十分ではない。下期からは、「みずほメイン」をキャッチフレーズに、顧客に対しグループ全体でサービスを提供する取り組みを強化する。

 というのも、中小企業中心のみずほ銀行やみずほインベスターズ証券がそれぞれ顧客にアプローチしており、連携が図れていない。

 みずほ銀行の取引先のうち、90%以上がオーナー企業。たとえばその経営者に、事業承継や不動産対策など信託の機能を信託銀行が提供、資産運用は証券と連携して行なうといったことだ。

 その1つのかたちとして、「成城トラストラウンジ」という新店を世田谷区に開設した。リストラ一辺倒できたため、新店開設はじつに16年ぶりだ。

 預金などは扱わず、みずほ銀行のコンサルティング部や証券と共同で、資産運用や不動産などに関するコンサルティングを専門に手がける新しい形態となっている。

 取り巻く環境は厳しさを増すことは間違いないが、こうした店舗を通じて顧客のニーズに積極的に応えていきたい。(談)


(聞き手:『週刊ダイヤモンド』編集部 田島靖久)