そもそも経営学は経営に使われているか
日経新聞の広告欄を見ていると、毎月のように経営学関係の新刊が出版されています。なかには「何万部突破!」などと書かれた広告も目にしますので、一定の読者層が存在していることがわかります。
では、経営学はどこまで実際の経営に使われているのでしょうか?
結論を先に言ってしまいますが、私は、経営学はまだまだ、実際の経営にはあまり使われていないと思っています。
なぜなら、私のまわりや知り合いのビジネスパーソンの方々から、よくこんなことを聞かされるからです。
日本企業が抱える問題点
以下では、まわりから聞こえてくる経営上の問題点について、いくつかのカテゴリーに分けて紹介します。
【戦略・マーケティングの欠陥・欠落】
・数値目標だけがあり、何も戦略がないまま漫然と経営されている。
・中期経営計画に「急激な成長」「圧倒的な強み」などの形容詞がいつも満載。
・戦略はあるがわかりにくく、理解できない。腹落ち感がない。
・開発先行で商品が先にでき上がり、その後、売り方を必死で考える。
・持続的競争優位の戦略になっておらず、すぐに競合に模倣される。
・担当役員が短期で交代するため、戦略がひんぱんに変わる。
【外部環境分析の欠陥・欠落】
・定量的な分析がなく、重点市場がなぜ重点市場なのか、データもなしに決定される。
・競合の状況がわからず、自社だけが進化すると思い込んでいる。
・顧客の声が社内に届かない。
・自社も他社もずっと赤字なのに、対象市場を変えない。
【経営資源分析の欠陥・欠落】
・自社の経営資源について関心がない。
・儲かっていた頃の強みを、今でも強みと信じている。
・どんな人材、どんな能力・知見を持っているか把握できていない。
【戦略実行・マネジメントの欠陥・欠落】
・経営陣が営業部長のように目の前の商談対応やクレーム処理に奔走し、戦略を実行しようという意識がない。
・事業別、商品別の損益がわからない。赤字事業がたくさん放置されている。
・開発や生産は、営業の販売力のなさを嘆き、営業は自社の技術のなさ、コスト競争力のなさを嘆いてばかり。
・営業は行きやすい顧客に行き、行くべき顧客に行かない。
・シェアが向上すれば良いことがあると思い込み、とにかく低価格で商談を取りに行く。