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5月27日の早朝、スイスの警察当局はチューリッヒ市内の高級ホテルでFIFAの関係者7名を逮捕した。さらに、カリブ海のトリニダード・トバゴでFIFAの元副会長ジャック・ワーナー氏も逮捕され、スポーツ関連会社の幹部など6人も起訴された。
早朝の逮捕劇から1週間。その間にスイスのチューリッヒではFIFAの会長選挙が行われ、批判が渦巻くなかで、ゼップ・ブラッター会長が5期連続で会長に選出されたが、その4日後に辞任を表明。ブラッター会長も米司法当局の捜査対象になっていることが判明し、2018年と2022年に開催されるワールドカップ(開催地はすでにロシアとカタールに決定)でも、不正行為が行われていた疑惑が浮上し、アメリカとスイスの司法当局が捜査を開始している。
FIFA幹部の不正に関するニュースは連日報じられ、情報があまりにも多いため、まずFIFA関係者ら14名がなぜ逮捕・起訴され、その後どういった展開を見せているのかを、少し整理しておきたいと思う。
14名が逮捕・起訴
前代未聞の汚職スキャンダルを整理する
四半世紀にわたってFIFAの幹部らによって行われてきた贈収賄や不正事件でアメリカの銀行が使われていたこともあり、米司法省はそれらに関与したFIFAの関係者やスポーツ関連会社の幹部を捜査対象とし、14人の起訴を決定した。米司法当局は過去24年間で少なくとも1億5000万ドル以上の贈収賄が行われていたと発表。腐敗体質から抜け出せないFIFAを、「汚職のワールドカップ」と厳しい言葉で非難している。
具体的には、来年アメリカで開催されるコパ・アメリカ(南米サッカー連盟主催の大陸選手権大会)100周年特別大会に関連して、1億ドル以上の賄賂が関係者に支払われていた容疑が挙げられている。他に、テレビの放映権やブラジル代表のユニフォームスポンサーをめぐっても、多額の賄賂が関係者に支払われていた容疑があり、これらの不正行為がアメリカの銀行を経由して行われていたことなどから、サッカーとの関係性があまりイメージできない米司法省が本腰を入れて捜査に着手したことが始まりだった。
リンチ米司法長官は先月27日、スイスでの逮捕劇から間もなくして、「2010年の南アフリカ大会の開催地決定をめぐって、不正が存在した」と語り、米司法当局が南アフリカ大会に関連した贈収賄でも捜査を進めていることを明らかにした。同日、カリブ海のトリニダード・トバゴでFIFA元副会長のジャック・ワーナー氏が、南アフリカ政府から1000万ドルの賄賂を受け取った容疑で逮捕されている(ワーナー氏は地元警察に自ら出頭)。リンチ司法長官はホルダー前司法長官の後任として4月27日に現職に就任したばかりで、就任直後に世界中が注目するスキャンダルを扱うことになった。