先週のスポーツメディアは、新たにサッカー日本代表監督に就任したバヒド・ハリルホジッチ氏(62)の話題で持ちきりだった。

 前監督のハビエル・アギーレ氏(56)がスペインの裁判所から八百長疑惑で告発されたことを受けて協会は解任を発表。だが、欧州のサッカーシーズン真っ盛りのこの時期、手腕が評価される指導者の多くは、どこかのクラブの監督を務めている。加えて6月からは2018年ロシアW杯のアジア2次予選が始まる。それまで3ヵ月ほどしかない。

 この限られた時間で選手の力量を見極め、代表に呼んでチームをつくり、自らの戦術を植えつけて好結果を残す。そんな重要な仕事を託せる人物はいるのか、ということで候補者の人選に注目が集まった。こうした背景があっての就任だからこそ、これだけの騒ぎになったのだのだろう。

実績・手腕は十二分
指導スタイルも日本向きか

 ハリルホジッチ氏は、よくこの時期にフリーの立場でいたと思えるほどの実績を持っている。2011年にアルジェリア代表監督に就任。厳しいアフリカ予選を勝ち抜いて2014年W杯に出場しただけでなく、同国をベスト16に導いた。この決勝トーナメント1回戦では優勝したドイツと対戦し、延長戦に持ち込む健闘を見せて世界から注目された。

 監督に就任した時点でのアルジェリアのFIFAランキングは52位だったが、現在は18位。ここまで実力をアップさせたのはハリルホジッチ氏の手腕に他ならない。現在の日本代表の世界ランクはこの時と同等の53位。契約は年俸200万ユーロ(約2億7000万円)でアジア最終予選終了までの2年半と破格だが、これでアルジェリア同様の躍進を実現させてくれるなら、決して高くはない。

 また、指導スタイルも日本に合っている。日本選手は真面目で勤勉といわれるが、同氏が選手に求めるのもルールや規律に厳格であることだ。それでいてW杯でアルジェリアがドイツを苦しめた試合後には選手と抱き合って号泣するという情も見せている。こうしたスタイルがうまく合致すれば、自信喪失気味の現日本代表を再生することができるかもしれない。