――身体を伴う知性と身体を伴わない知性……。たとえばどういうことですか。

 たとえば、収入や社会的な成功とIQとは相関関係がないんです。ありそうだけど案外ない。むしろ収入や社会的な成功は、社会性やコミュニケーション能力と相関しているんです。

 違う例を出しましょうか。たとえば僕がいま突然転んでも、案外ケガをしないわけです。なぜなら、うまく手をついたり自然にケガをしない姿勢になったり、いろいろ防御するからです。でもそれは大脳でいちいち命令を出しているわけじゃない。だからコンピュータを使ってロボットにやらせようとすると、プログラミングするのがめちゃくちゃ難しい。予期せず転んだ時にダメージを受けないようにすることはロボットは絶対できないんです。いま時、コンピュータは将棋のプロに勝ったりするんですよ。大脳レベルの、身体を伴わない知性ではコンピュータは急激に進化してきたにもかかわらず、なぜかあまり知性的でないとされる行為はまだできないのか。

 これまでは論理化できて言語化できる大脳レベルの知ばかりが発展してきました。言語化された知はものすごい効果を生みました。産業を生んだし力学も生んだ。でも、それだけでは説明がつかないことが見えてきたわけです。たとえば、IQと収入との相関関係とか、空気を読める人かどうかとか、人間は転んでもなぜケガしにくいかとか。ここには20世紀まではアンタッチャブルというか、まったくフォーカスが当たっていなかったんです。それに対してフォーカスを当てることが、これからものすごく重要なのではないかと思っているんです。

◆猪子寿之氏へのインタビュー全文は、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー7月号に掲載されています。